離婚問題に詳しい山下環弁護士(左)と、離婚カウンセラーの岡野あつこ氏
結婚期間が20年以上の夫婦の離婚、いわゆる「熟年離婚」を選択する夫婦の数は近年増えている。
厚生労働省が発表した2025年の「人口動態統計月報年計」によると、2024年には過去最多となる4万684組、2025年も3万9886組と高い水準で推移。同年の全離婚件数17万9068組と比較すると、“約4組に1組が熟年離婚する時代”に突入しているのだ。
「長生きすることが当たり前の世界になり、夫婦生活での不満やうっぷんがたまりやすい状況になっています」
そう語るのは、数多くの相談を受けてきた離婚カウンセラーの岡野あつこ氏だ。
「そのうえ、女性の社会進出により、自ら職を見つけて老後の生活設計ができる社会になりました。財産分与など離婚に関する知識も浸透し、男性の収入に頼らなければならなかった時代とは異なり、我慢するよりも“独立”を選ぶ女性が多くなっていると考えられます」(同前)
では、具体的にどういった理由・原因で熟年離婚に至ることが多いのだろうか?
「まず女性から離婚を願い出るケースでは、夫が妻に当たり前のように家事や育児をまかせっきりにして、『俺が稼いできてやっているんだ』という態度で接する“モラハラ的な言動”が原因になることが多いですね。
逆に、夫側から離婚を願い出るケースでは、自分が稼いだお金を妻に自分勝手に使われた挙句、ぞんざいにされる、いわば“ATM扱い”に不満を覚えるということが多いです。また、浮気の末、最期まで添い遂げたいと感じる新たな女性を見つけ、妻に離婚を申し出るケースなどもよく見られます」(同前)
中高年男性の熟年離婚後のパターンには、2種類あるそう。離婚後に人生を謳歌して満足しているパターンと、妻や子供がいなくなり孤独に苦しみ後悔するパターンだ。
「自分の稼ぎを妻に勝手に散財されていたり、自分の仕事への理解を得られなかった男性の場合は、離婚におおむね満足しています。
一方で、料理・洗濯・掃除など家事全般を妻に頼りきっていた男性は、熟年離婚を後悔するケースが非常に多い印象です」(同前)
■食事デート後のお土産は「5個がベスト」
夫婦のトラブルに詳しい山下環弁護士は、熟年離婚の注意点を、次のように指摘する。
「特に多いのは“お互いへの感謝の気持ちの不足”に起因する熟年離婚です。一方が仕事に専念できる環境があるのは、家事をするパートナーのおかげです。逆もしかりで、一方が専業主夫(主婦)の場合は、相手の稼ぎがあるから家族の生活が成り立つ。各自の役割への感謝を伝えることは、熟年夫婦をつなぎとめるための最重要事項のひとつです」
山下氏は、離婚時の財産分与にも注意点があるという。
「離婚後の財産分与については“2分の1ルール”というものがあり、基本的に夫:妻で1:1の割合になりますが、たとえば妻が病弱で働ける状況ではない場合や、高齢で就職が難しいといった扶養の問題がある場合は、上乗せして妻側に財産が渡された事例もあります。また、不倫やDVなどが原因だと、慰謝料として上乗せ請求される場合もあります」
離婚後の中高年男性はどう動けばよいのか。岡野氏はこうアドバイスする。
「別れた後の最大のストレスは“孤独”です。それを防ぐには、自ら進んで新たなコミュニティに飛び込んでいくのがおすすめです。講演会、勉強会、バスツアーに参加するなど、男女を問わずさまざまな人脈を作っておくと、新たな趣味やパートナーとの出会いにつながりやすい。離婚後の暗い気持ちを切り替えつつ交友関係を広げることが、よりよい暮らしをかなえるヒントになるかもしれません」
新たなパートナーと出会ったときは、丁寧なアプローチ術が重要になる。熟年離婚を経験し、76歳のときに20歳年下の女性と再婚を果たした落語家・タレントのヨネスケ(78)は、落語家時代の経験が大いに役立ったと語る。
「いい異性が現れたら、本人より先にその家族に気に入られるのが結婚への一番の近道。彼女のお母さんやきょうだいを食事に誘って味方につける。この“外堀から攻める”手法は、落語家時代に先輩から『師匠より奥さんに気に入られたほうが得だ』と教わった知恵なんです」
女性とのデートでも、ちょっとした気遣いを徹底していたという。
「たとえば食事デートが終わったら、彼女の家族のぶんまでお土産を渡すね。だいたい5人ぶんのお菓子を用意しておけば、彼女が持って帰って家族にもアピールできる。3個だとケチに見えるし、10個だと重いから5個がベストです」(同前)
相手の好みを聞き出すことも会話のポイントだという。
「普段の会話からさりげなく好きなものを聞いておく。お互いの好みを知っていけば自然と会話も弾むし、次のデートの口実にもなるでしょう」(同前)
人生の岐路に立とうとも、臆せず進め。
写真・長谷川 新
取材&文・瑠璃光丸凪(A4Studio)
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