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完全な劇中仕様に戻す費用は「車2台分」映画『ワイスピ』登場のマツダRX-8を購入した女性オーナーの“葛藤”

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.10.03 06:00 最終更新日:2026.10.03 06:00

完全な劇中仕様に戻す費用は「車2台分」映画『ワイスピ』登場のマツダRX-8を購入した女性オーナーの“葛藤”

”世界一有名”な『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で登場したマツダRX-8(写真・木村哲夫)

 

「初めてこのRX-8を見たのは、中学1年生のころです。『ワイスピ』が大好きだったので、本物の劇中車を目の前にして、とてもうれしかったですね。それから約10年。縁あって、私がオーナーになりました」

 

 美容師のMisaさんの愛車は、“世界一有名なRX-8”といわれる映画『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』で、ヒロインのニーラ(ナタリー・ケリー)が運転したマシンである。マツダRX-8をベースに、日本を代表するカリスマチューナー、VeilSide代表の横幕宏尚氏がデザインを担当。コバルトブルーからブラックへと沈み込むグラデーションに、鮮烈なネオンブルーのラインが走るボディーは、唯一無二の存在感を放つ。心臓部には1.3Lロータリーエンジン「13B-MSP」を搭載し、GReddy製ターボキットによって最高出力約305馬力まで強化。フロントバンパーからのぞく大型インタークーラーやTanabe製マフラーも、ただならぬ迫力を醸し出す。美しさと走りのすごみを兼ね備えた、特別なドリフトマシンだ。

 

 米国へ渡っていたRX-8は、2010年に帰国した。インターネットの中古車情報で偶然、その姿を見つけ、購入を決めたのが前オーナーの女性だった。初度登録は2003年で、購入時の走行距離は2万9084km。前オーナーのもとで、RE雨宮のマフラーやWedsSportのホイール、Defiの追加メーターなどが装着され、街乗りにも対応する実用的なマシンへと仕上げられていった。その後、12年間で14万km以上走ったが、生活スタイルの変化に伴い、惜しまれながらも手放されることになった。

 

 Misaさんが車に目覚めたのは、幼稚園のころだった。商業施設のモニターに映っていた映画『ワイルド・スピードX2』(2003年公開)に、ひと目で釘づけになったのが始まりだ。

 

「母に『これが観たい!』とおねだりしたのが、『ワイスピ』との出会いです。劇中で倉庫から無数の車が一斉に飛び出すシーンは圧巻で、本当にしびれました。以来、シリーズ全作を何回観たか分からないほど、繰り返し観ています。私が『今日、映画は何を観る?』といえば、『ワイスピのどれを観る?』という意味。車内でも、『ワイスピ』のサウンドトラックばかり流しています」

 

 Misaさんの母親の愛車もブラックのRX-8だった。その縁から、劇中車を所有していた前オーナーとも親交があったという。

 

「中学2年のとき、母と前オーナーさんと一緒に出かける機会があり、憧れていたRX-8の助手席に乗せてもらったんです。それだけで夢がかなったような気持ちになり、当時は十分、満足していました。その後、自分で車を買うなら『ワイルド・スピードX2』に登場したスーキー(デヴォン青木)のホンダS2000か、RX-8がいいと思い、マニュアル車に乗れる免許を取りました」

 

 転機が訪れたのは2022年。前オーナーが手放すことを決め、劇中車は一度、オークション会場へ送られた。しかし、かねてからRX-8に強い思いを寄せていたMisaさんの顔が浮かび、前オーナーから「よかったら乗ってくれませんか?」と連絡が届いた。

 

「『買います!』と即答しました(笑)。免許を取ってから4年ほどたっていましたが、母のRX-8を借りられたので、自分用の車は探していなかったんです。でも、ちょうど母と『いつか親子で、それぞれRX-8に乗れたらいいね』と話していたところでした。こんなチャンスは二度とないと思いました」

 

 オークション会場から戻されたRX-8は、無事にMisaさんのもとへやって来た。

 

「自分のものになったときは、もう『超うれしい! 楽しい!』という感じでした。人生で初めて買った車が、あこがれの劇中車ですからね。手に入れてからは自分らしく仕上げたいと思い、テールランプをスモーク化し、ステアリングや内装にも個性を加えました。燃費は1L当たり約5kmですが、そんなことはまったく気になりません」

 

 その後、Misaさんのもとにはカーイベントへの出展依頼が寄せられ、この劇中車を大勢の人に披露する機会が増えていった。

 

「前オーナーさんがかなり手を入れていたこともあり、私も最初は自由にパーツを交換して楽しんでいたんです。でも、イベントなどで『本物の劇中車』としてお披露目する以上、映画に登場したときと見た目が違っていていいのだろうかと、悩むようになりました。ホイールは、撮影時と同じオリジナルに戻しています。自分の個性を出したい気持ちと、劇中車の世界観を守りたい思い。その2つが交錯しています」

 

 カーイベントの会場には、熱心なファンが製作した精巧な「ニーラ仕様」のレプリカが並ぶこともある。そのため、カスタムが加えられた現在の姿では、正真正銘の劇中車でありながら、来場者から「映画の仕様と少し違う」と誤解されることがあるという。

 

 ドア開口部やセンターコンソールの内側には、管理番号のステッカーがいまも残っており、本物の劇中車であることを証明できる。しかし、ひと目見ただけでは、その価値が伝わりにくい。そのもどかしさが、Misaさんの葛藤に拍車をかけている。しかも、完全に撮影当時の仕様へ戻すには、車2台分ほどの費用がかかるという。

 

「時間をかけて、少しずつ戻していこうかな……。この車は乗っているだけで、買ってよかったと思えますし、イベントに参加したことで人とのつながりも増え、人見知りもだいぶ解消されました。いいことしかありませんね。運命の車なので、一生、手放すつもりはありません。もし、ほかにほしい車ができたら、そのときは“増車”します」

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出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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