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日本の「60歳以上」資産の7割、土地の6割、消費の5割を握っていた

ライフ・マネー 投稿日:2018.06.22 11:00FLASH編集部

日本の「60歳以上」資産の7割、土地の6割、消費の5割を握っていた

写真:AC

 

 上の世代がいつまで経っても重要ポストに居座り、企業をはじめあらゆる場所で新陳代謝が起きにくくなっている。その結果、若い人たちが力を発揮する場所が一向に増えず、社会に新しい価値観が根付かない。時代が変化しつつあるのに、旧来型の発想から抜け出せず、成長の芽が摘まれてしまう――。

 

 高齢者が経済の真ん中に居座り、牛耳り続けるこの社会現象を、私は「GG資本主義」と名付けました。データをひも解くと、至る所にその影響力が見て取れます。
 

 例えば、会社を動かすトップ。日本企業の社長の平均年齢は近年上がり続けていて、2017年時点で、59.5歳。調査を始めてから最も高い数字で、1990年以降に比べて平均年齢は5歳も高くなっています。

 

 さらに年齢構成を見ると、60歳以上が全体の約半数を占めています。日本における女性社長の割合はわずか7.69%ですから、日本の会社の半分近くが「還暦を過ぎた男性」によって動かされていることがわかります。

 

 経済の主体は、会社だけではありません。われわれ個人が生活の中で行う「消費活動」も、大きなインパクトを与えます。

 

 会社とはつまるところ、モノ・サービスを提供して、顧客に買ってもらうことで成り立っている。消費者がお金を使わなければ、事業活動は回っていきません。

 

 実は、消費で存在感を放っているのも、60歳以上です。結婚して家を構えたり、交際費に使ったりする働き盛りの人々が一番消費していそうですが、2015年の消費シェアに占める30~39歳の割合は、わずかに9.9%。40~49歳ですら、19.8%しかありません。29歳以下となると1.5%で、統計上の存在感はほとんどありません。

 

 一方、60歳以上は47.8%にも上ります。世の中の消費の約半分が60歳以上によって行われているって、少し意外な結果ではないでしょうか。

 

 調べていくと、それもそのはず、と思わせるデータがありました。各資産の保有者の割合を年代別に見ると、60歳以上の保有率が金融資産で68.8%、土地保有で56.4%という、非常に高い数値です。

 

 親の代からの財産を受け継いでいる方もいれば、長い間働いてこつこつ資産を形成してきたという方もいるでしょう。いずれにせよ、他の世代に比べて資産を保有している率が圧倒的に高いわけですから、安心してお金を使える人が多いことも頷けます。

 

 現在、消費社会の主人公であり、会社を動かすキーパーソンでもあるのは、明らかにGGたち。そこに、本来バリバリ働いて稼いでいるはずの30代、40代の姿は現れてきません。ましてや、20代の若者たちなど、「どこにいるの?」という感じがします。これからの未来をつくる主役は明らかに彼らのはずなのに。

 

 私は何も、高齢者の方々を悪く言うつもりはありません。問題は、GG資本主義という「構造」なのです。GG資本主義によって成長が阻害されているという現状に不安を抱いているのであり、誰が経済を握ろうとも、みんながちゃんと成長できれば、それでいい。

 

 しかし、そうなっていないからこそ、あえて言いづらいことを言い、警鐘を鳴らそうとしているのです。

 

 私はファンドマネージャーとして、約30年にわたって7000人近くの社長を取材してきました。貸借対照表や損益計算書、アニュアルレポートといった公開資料だけに頼らず、会社に足を運んで実態を見て、投資すべきかどうかを判断してきました。

 

 そうやって日々、時間と労力をかけて「企業の成長」に向き合い、思考してきたからこそ、見えてきたことがあります。

 

 ここに、重要なデータがあります。上場企業約3300社の社長を年齢別にグループ分けして、3年間の株価のパフォーマンスと売上高の変化率を調べました。すると、60代以上の社長の会社より、30代、40代の社長の会社は売上高の伸び率も、株価の上昇率も高いことがわかりました。

 

 上場したばかりのベンチャーなど、会社自体も若く、急成長しているところが多いこともあるのでしょう。それに、社長の年齢が高い会社は規模が大きくなり、小規模な若い会社より成長のスピードが鈍化するのは仕方ないことかもしれません。

 

 とはいえ、ベンチャーではなく大企業であっても、トップが若返って業績が伸びることはよくあります。

 

 一般的に若いほど時代の流れに乗りやすく柔軟な思考ができるということがあるのでしょう。社長を務めるのは60~70代くらいの経験豊富な人がよいというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際は逆なのではないでしょうか。

 

 企業のパフォーマンスを上げるためにも、GGが君臨する経営をやめて、権限と責任を一切合切まとめて若い世代に渡すこと。これがいま、企業の成長、ひいては経済・社会の成長に欠かせないことではないでしょうか。

 

 

 以上、藤野 英人氏の近刊『さらば、GG資本主義 投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)を元に構成しました。ひふみ投信を運用する最強ファンドマネージャーが教える、日本のこれから!

 

●『さらば、GG資本主義』詳細はこちら
https://honsuki.jp/stand/4270.html

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