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受験問題から核燃料まで輸送!知られざる「警備員」の世界

ライフ・マネー 投稿日:2018.06.25 11:00FLASH編集部

受験問題から核燃料まで輸送!知られざる「警備員」の世界

 

 突然ですがクイズを出題しますので、4つの選択肢の中から答えを1つだけ選んでください。

 

問題 日本には何社くらい警備会社があると思いますか?

 

(1) 約100社
(2)約900社
(3)約1800社
(4)約9000社

 

 正解を発表しましょう。2016年末時点で、日本には警備会社が9434社あり、約54万人の警備員が存在しています。

 

 警備業務はどれくらいの種類があるのでしょうか。実は、大きく分けて4つあります。

 

 1つ目は施設を守る業務です。警備業法で列記されている順番にあわせて、1号警備業務といわれています。事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地などの対象施設で、盗難などの事故が発生しないように警戒し、防止する業務です。

 

 2つ目(2号警備業務)は不特定多数の人や車両を誘導する業務、3つ目(3号警備業務)は貴重品や危険物を運ぶ業務、そして4つ目(4号警備業務)は身辺を守る業務です。ボディガードもここに含まれます。

 

 3号警備業務のなかで、多くの人が日常的に目にするのは「現金輸送」です。現金輸送は字のごとく「現金を運ぶ」のが主な業務ですが、それ以外にも現金にかかわる業務を幅広く請負っています。

 

 具体的には、ATMの障害対応と現金の保管です。いずれも、本来は金融機関の業務ですが、一部を警備会社に委託しているのです。

 

 例えば、コンビニや大型商業施設などの店舗内に設置されているATMは、現金が不足すれば稼働できませんので、定期的に警備員がATMに現金を補充しています。

 

 あわせて、ATMのメンテナンスを行うだけでなく、現金やカードが出てこない場合なども、銀行員ではなく警備員が駆けつけて対応します(機械警備の警備員が対応する場合も多い)。これが障害対応です。

 

 迅速かつ効率的に現金を輸送できるよう、警備会社の営業所などで現金を保管したり、仕分けをすることもあります。

 

 また、「貴重品」は現金だけではありません。例えば、絵画などの美術品も貴重品です。美術館では常設展とは別に特別展が開催されますが、そこで展示される美術品はほかの美術館から期間限定で借りているものです。

 

 その美術品を輸送するときに盗まれたり、破損したら取り返しがつかないので、警備員が警戒しながら運搬しています。

 

 さらに、大学入試センター試験などの試験問題を輸送するのも警備員です。事前に問題が漏洩したら一大事なので、厳封した上で、盗まれないように警戒しながら運搬するのです。

 

 なお、「現金輸送車」であれば、単独自走する車両に貴重品(現金)を積み込んで運搬しますが、大型の荷物を運搬する場合などは、荷台に収まりません。

 

 そのため、運搬用の車両(トレーラーなど)に荷物を載せ、その車両の周囲に警備員が乗った車両を伴走させる方式もあります。

 

 文字通り、核燃料物質などの特殊な危険物を運搬するのが核燃料物質等危険物運搬警備業務です。主に原子力研究所や原発で使用される核燃料が対象になります。

 

 いうまでもなく、核燃料を積んだ車両が交通事故に巻き込まれたり、盗まれたり、テロの標的にされて爆発しようものなら、国難レベルの大惨事です。

 

 そのため、核燃料の輸送については、原子力基本法の第12条や、原子炉等規制法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)の第59条で規定されています。

 

 核燃料を積んだ車両の周囲に警備員が乗った車両が伴走するのが基本ですが、伴走する車両の配置や警備員の配置などを事前に公安委員会に届け出なければなりません。公安委員会も、車両の配置や速度、警備員の配置などについて必要な指示を出せるようになっています。

 

 2016年末時点でこの業務を実施している警備会社はわずかに9社、構成比は0.1%にすぎません。しかし、異常発生時の影響力の大きさを考えれば、極めて重要かつ専門的な業務だといえます。

 

 

 以上、田中智仁氏の新刊『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書)を元に構成しました。人手不足、老老警備、格差、男社会……知っているようで知らない警備業の実態と課題を描きます。

 

●『警備ビジネスで読み解く日本』詳細はこちら

https://honsuki.jp/stand/4083.html

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