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「営業力」とは人間と組織を売り込む力…お客様が買ってくださったのは「君という人間」という意識を忘れずに

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.10.24 18:00 最終更新日:2026.10.24 18:00

「営業力」とは人間と組織を売り込む力…お客様が買ってくださったのは「君という人間」という意識を忘れずに

写真・AC

 

 まず最初に、

 

「営業力」とは、何か。

 

 そのことについて、述べておきましょう。
 しかし、これは、プロフェッショナルをめざして歩む人間にとっては、根本的な問い。
 私も、その「営業力」で仕事をしてきた一人の人間として、それなりの覚悟を持って、答えておきましょう。
 もし私が、「営業力とは何か」と問われれば、答えは、一言です。

 

 人間と組織を売り込む力。

 

 それが「営業力」です。

 

 しかし、こう申し上げると、驚かれる方がいるかもしれません。
 営業力とは、「商品やサービスを売り込む力」のことである。
 そう思われている方は、驚かれるのではないでしょうか。
 そうであるならば、この講義の冒頭、申し上げたい。

 

 その発想を切り替えるべきです。
 なぜ、そう申し上げるか。

 

「営業力」の原点は、商品もサービスも無いところから始まるからです。

 

 例えば、皆さんが、会社を起こしたとします。会社を創って、ある商品を開発し、それを販売しようと、営業活動を始める。そして、最初の顧客のところに行き、その商品を見せる。それを売り込もうとする。しかし、なかなか売り込めない。ある意味では、当然。何の実績も無い会社。何の実績も無い商品。何度も門前払いを喰う。それでも諦めず、顧客を訪問し続ける。そして、ある日、何度目かの訪問をした顧客が言ってくれる。「分かりました。あなたの熱意には負けた。その商品、使ってみましょう」。その会社にとって、初めて商品が売れた瞬間。初めての取引先の誕生。喜んで会社に戻り、仲間に伝える。「おい、ついにこの商品が売れたぞ」。たしかに、それは、商品が売れた瞬間。しかし、本当に売れたのは商品ではない。本当に売れたのは、人間。

 

「あなたの熱意には負けた」。その顧客の言葉が、それを教えてくれます。

 

 これが商売の原点です。
 これは、決して、特殊な話ではありません。
 現在、我が国で活躍している大企業も含め、すべての企業の原点は、ここに、ある。
 どの企業にも、その草創期には、こうしたエピソードが、ある。
 何の実績も無い会社。何の実績も無い商品。何の実績も無いサービス。
 しかし、顧客に「人間」を買っていただくことから、すべてが始まった。

 

 そこに、商売の原点があり、営業力というものの原点が、あります。

 

 もし、我々が、本当にプロフェッショナルとしての営業力を磨きたいと思うのならば、いかにしてこの商品を売り込もうかと考える前に、そして、あれこれのスキルやテクニックを身につける前に、この原点を見つめなければなりません。

 

 営業力の原点は、商品もサービスも無いところから始まる。
 そして、まず何よりも、人間を売り込むところから始まる。

 

 そのことを見つめなければなりません。
 しかし、我々は、忘れてしまいます。

 

 企業の看板。名刺の肩書き。
 実績ある商品。確立された販売網。
 充実した顧客情報。整備された営業マニュアル。
 そうした恵まれた環境の中で、商品の売り込みに奔走する。

 

 そうした日々の中で、我々は、営業力の原点を、忘れてしまうのです。

 

 いつのまにか、営業力とは、その恵まれた環境の中で、商品やサービスを顧客に売り込むことであると思ってしまうのです。会社から与えられた営業マニュアルを使い、先輩から教わったスキルやテクニックを使って、商品やサービスを売り込むことであると考えてしまうのです。

 

 そして、営業力の原点を見失ってしまう。

 

 かつて、営業力とは、顧客に人間を売り込む力であった。
 商品を買っていただく前に、まず人間を買っていただく。
 その力であった。

 

 人間を買っていただくことで、その人間が働く組織を買っていただく。
 その人間と組織への信頼によって、顧客に商品を買っていただく。
 その力であった。

 

 そのことは、これからも変わらぬ真実なのです。
 そして、決して変わらぬ営業力の原点なのです。

 

 もし、我々が、本当にプロフェッショナルとしての営業力を磨きたいと思うのならば、まず最初に、この原点を見つめなければなりません。

 

 この原点を見つめるところから、プロフェッショナルの歩みを始めなければなりません。

 

 だから、私の職場では、若手スタッフが営業に行き、初めて売り込みに成功したとき、かならずかける言葉があります。

 

「おめでとう。
 しかし、お客様が買ってくださったのは、
 本当は、商品ではないよ。
 君という人間を、買ってくださったのだよ」

 

 その言葉です。
 私の職場では、若手スタッフが最初の営業に成功したとき、そう祝福します。
 そして、「商品が売れる」ということの、本当の意味を教えます。
 それが、「自分が売れる」ということであることを、教えます。

 

 なぜなら、そのことを知っているかどうかで、その若手スタッフのプロフェッショナルとしての歩みが、定まってしまうからです。

 

「自分自身」が、最高の商品である。

 

 そう思い定めたプロフェッショナルは、そのとき初めて、「人間を磨く」という道を歩み始めるからです。

 

※

 

 以上、田坂広志氏の新刊『営業力「顧客の心」に処する技術と心得』(光文社新書)をもとに再構成しました。ビジネスの真髄を、著者自らの血が噴き出るような体験をもとに語り尽くします。

 

■『営業力』詳細はこちら

出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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