ライフ・マネー
【実録】ガンになったらどれだけお金がかかる?尾澤さんの場合
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.07.27 16:00 最終更新日:2018.07.30 10:26
誰だって病気にはなりたくない。しかし、なってしまったらどれだけ費用がかかるか、知っておいて損はない。気になる「病気とカネ」の関係、まずは多くの人が直面する「ガン」について。
「ガンになるまでは自己中心的だったのですが、なってから人の気持ちがわかり、感謝、反省ができるようになりました。元気になったから言えることですが、ガンになってよかったとも思っています」
そう笑顔で話すのは、尾澤三佐男さん(51)。2016年12月、長引く頭痛と鼻詰まりから、2カ所の病院を受診したが症状が治まらず、年明けに総合病院で検査を受けたところ、上咽頭ガンのステージIIIだと診断された。
「鼻の奥に6センチぐらいの腫瘍ができ、リンパ節にも転移があるとのことでした。外科手術をすると、顔の半分を失う、と。そこで、放射線と抗ガン剤での治療をお願いしました」
1カ月の検査を経て、2017年2月14日に入院、治療を開始。
「放射線で、喉が焼けたような状態になるんです。痛くて物が飲み込めず、唾液も出なくなります。そのため、この治療を受ける人は、胃瘻にする人が多いんですが、僕は口から食事をすることにこだわりました。
また、病院にいると孤独で、どうしても死について考えてしまいます。家に戻るとそんな気持ちが落ち着くので、毎週末、外泊許可を取って自宅に戻り、ヨーグルトやプリンを頑張って口から流し込んでいました」
抗ガン剤治療が始まると、その辛さは想像以上だった。
「寝返りを打つだけで吐き、体重はみるみる減っていきました。でも僕の場合、大好きなサッカーをまたやりたいという一心で、体力をつけようと、治療中も毎日3キロ、病院のまわりを歩きました」
46日間の入院で、ガン細胞はなくなり、退院。数日後には仕事に復帰した。
顔にメスを入れることなくガンを克服できた尾澤さん。彼が実際に治療にかかった費用と、保険金などの収入を表にまとめてくれた。治療費の支出合計は64万6560円。保険金と勤務先からの給付が計138万9500円あった。
「45歳を過ぎたとき、外交員さんの強いすすめでガン保険に加入したんです。その一時金80万円が入ったのが大きかったですね。これがなかったら、当面の出費をカバーできませんでした。
また、日額5100円の入院保険も出ました。入院中は病欠扱いだったため、給与は基本給の8割の支給。しかし、家のローンや子供の学費など、家族の出費は病気に関係なくかかります」
また尾澤さんの勤務先の自動車メーカーでは、医療費の自己負担金が高額になった場合、健保から「付加給付」が出ることになっている(表では「府加金」「加金」と表記)。
「これもありがたかったですが、支給は受診月の3カ月後。妻は、その3カ月が大変だったと言っていました」
今は2カ月に一度の通院で、受診料は2030円。ほかに6カ月に一度のCT造影料(1万9630円)、MR検査料(2万4750円)がかかる。
「自分の経験からいえば、CMでやっているような、ガン治療を受けながらの『ながらワーク』なんて、とてもできません。治療中は、働きたくても働けませんから。放射線治療や抗ガン剤が、もっと安くなるといいと思いますね」
(週刊FLASH 2018年6月19日号)