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【目指せ不思議スポット】異彩を放つ古代のアート「手宮遺跡」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.08.23 06:00 最終更新日:2018.08.23 06:00
北海道の小樽駅から車でほんの数分の隣町である手宮は、1880年に北海道初の鉄道・手宮線が通じた場所で、1985年までは手宮駅という貨物駅も置かれていた。
海岸に面し、波の荒れた日には大量の藻が打ち上げられる場所であったため、その光景を指すアイヌ語「テムムンヤ(藻の丘)」が転訛して、手宮という地名が定着したという。
ここに古代人が刻んだ壁画が保存されている。これが何とも言えず奇っ怪な図柄で、一見の価値ありなのである。
描かれた30体以上のモチーフは、どれも人間のように2本足で直立しているが、頭部には角や触覚を思わせる不思議なパーツがついており、まるで悪魔のようなシルエット。なかには杖のようなものを手にしているものもある。
これはいったい、何を意味するものなのか? そして、これを描いたのは何者なのか?
禍々しささえ感じさせるモチーフの奇妙さも手伝って、手宮洞窟の壁画の発見は大きな話題となり、多くの研究者がここを訪ねて分析に務めた。
やがて周辺の発掘調査によって、この壁画は1600年前の続縄文時代に彫られたものと判明する。調査面積が少ないため数は少ないものの、当時の土器や石器が出土しており、なかにはこの壁画を彫るのに用いられたと思われる、刃の部分が傷んだ石斧も見つかっている。
こうした古代人の壁画は、日本では手宮洞窟のほか、同じく北海道の余市にある「フゴッペ洞窟」の2例のみ。入場料100円(一般)でこの貴重な古代の遺物を見ることができるのは、実にお得だ。
手宮洞窟やフゴッペ洞窟に残された奇妙なモチーフは、頭に祈祷用の飾りを施した当時の人々を表している、というのが最も有力な説となっている。
フゴッペ洞窟の壁画には、翼のようなものが生えた人間のほかに、魚や船らしきものが確認できるから、当時から海を介した文化交流が活発に行なわれていたことがわかる。そして、大漁や安全を祈願するシャーマンも活躍していたのだろう。
そんな古代のロマンに浸れる場所が、手宮遺跡とフゴッペ洞窟なのだ。
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以上、友清哲氏の新刊『消えた日本史の謎』(知恵の森文庫)から再構成しました。謎の構造物、おかしな物体、奇妙な伝承、未解明のパワースポット…不思議をめぐる旅の記録です。