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ハザードマップで知っておきたい洪水・津波・土砂災害リスク
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.09.10 06:00 最終更新日:2019.10.24 10:15
7月の西日本豪雨で大きな被害を受けたのが岡山県倉敷市真備町だった。一級河川・小田川の堤防が決壊、浸水の深さは最大で5メートルを超え、真備町だけで51人が死亡した。
この事態を避けることはできなかったのだろうか。
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2018年6月、国土交通省は「逃げ遅れゼロ」を目指す取り組みとして、ポータルサイト「重ねるハザードマップ」で全国109水系の洪水浸水想定区域の表示を開始した。
「重ねる〜」は洪水・土砂災害・津波のリスク情報、土地の特徴や成り立ちなどを地図と重ねて表示できる防災ツールだ。
これで真備町の洪水浸水想定区域を見てみると、今回浸水した範囲とほとんどピタリと重なっている。しかも浸水想定は10〜20メートルとなっており、全国的に見ても、洪水リスクはかなり高かったことがわかる。
真備町では1972年、1976年にも洪水があり、明らかに “危険な町” であった。にもかかわらず、重工業地帯・倉敷のベッドタウンとして人口を増やしてきた経緯がある。
「この大氾濫を引き起こしたのは『初動の遅れ』によるダムの異常放水であり、その意味では明らかな人災」と断言するのはジャーナリストの横田一氏。
堤防決壊の直接の原因は、合流する高梁川の水位が高まり、小田川の流れがせき止められた「バックウオーター」と呼ばれる現象だ。
「気象庁が早い段階から『記録的豪雨の恐れ』と警報を発していたにもかかわらず、高梁川上流の治水ダムでは放水量を調整するなどの対策が取られず、放水量を増やしたのは気象庁の警報の27時間も後のことでした。
その後、ダムは貯水機能を喪失し、ダムに流入した水をそのまま放出する『異常洪水時防災操作』が続いたのです。堤防決壊はダムの治水機能喪失の2時間半後。『27時間のロス』が致命的な事態を招いたことは明白です」
これに対し、岡山県高梁川ダム統合管理事務所は「ダム決壊を避けるために異常放水は仕方なかった」としている。
「これがダム治水の限界です。日本初の流域治水条例をつくり、河川政策の専門家でもある前滋賀県知事の嘉田由紀子氏はこう語っています。『この地区の最優先課題は堤防補強だったのです。歴代自民党政権は「堤防よりダムだ」と言って、ダム建設ばかりを推し進めてきた。この河川政策が大きな被害をもたらしたのです』と」(前出・横田氏)
リバーフロント研究所の土屋信行氏は「避難指示の遅さ」を指摘する。
「避難指示は河川の水位上昇を基準にして発令されます。大雨の真っ最中に出されるわけです。これでは高齢者や小さな子供の避難行動は難しくなり、夜間であればさらにリスクは大きくなる。
真備町に避難指示が出たのは6日の午後11時45分と7日の午前1時半でした。避難情報発令のあり方を根本的に見直さなければならないでしょう」
避難指示の遅れは、2011年の東日本大震災、2013年の伊豆大島と2014年の広島の土砂災害、そして2015年の鬼怒川の氾濫でも指摘されている。
このような災害はいつどこで起きても不思議はない。備えはできているか――?
(週刊FLASH 2018年9月4日号)