■業種・職種を超えての越境転職を
では50代転職に成功するのはどんな人か。リクルートキャリアの藤井編集長は前職と関係のない「越境転職」が最近の特徴だという。図の円グラフを見ても、50代の転職先はあらゆる業種・職種に及んでいることがわかる。
「前職の経験がまったく別の職種で生きる事例がたくさんある。ところが、『自分の背中のホクロは自分では見えない』ように、自分の市場価値は自分ではなかなかわからない。自分の経験で何ができるかを客観視してみるべきです。これを私は自分の能力の“因数分解”といっています」(藤井編集長)
一方、シニアの就労支援をおこなうマイスター60の井口順二シニアビジネス事業部長は「何をしたいかではなく、何ができるかが大事だ」と力説する。
「シニアになって『こんな仕事がしたい』と言っている場合ではありません。たんに幅広くやってきました、というだけでは通用しない。この分野に関しては絶対的な自信があるという人ほど強い」
転職という冒険をせず、60歳定年後に再雇用を選んでも、65歳までしか雇ってもらえないという「65歳の壁」が待ち受けている。白石副社長は「65歳以降も働きたいと思っても、会社は次の仕事を紹介してくれません。しかも今後は働きたいという人が増えますが、現実問題として仕事を探すのは難しい」と語る。
ではどうするか。これも60歳の転職と同じで、65歳まで働くと、66歳以上の求職者が転職市場に溢れることになる。おすすめは「62〜63歳くらいから準備し、65歳前に転職する」(白石副社長)ことだ。
最後に、転職先で注意したいことがある。失敗する人に共通するのが「我が強すぎる」「プライドが高く、謙虚さに欠ける」「古巣との比較を、ついしてしまう」「過去の地位や人脈にこだわる」人だ。
「以前の職場での地位やプライドにこだわる人は、謙虚さに欠けた振舞いをしやすい。新人と同じ気持ちで、若い人や経営者とも対話できるコミュニケーションを心がけることが大切です」(井口事業部長)
50歳からでも遅くはない。70歳まで働くことを見据え、今から準備しておくことだ。きっと最後に人生の逆転弾が放たれる!