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【目指せ不思議スポット】太平洋を一望する縄文時代の磐座
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.10.18 11:00 最終更新日:2018.10.18 11:00
四国の最南端に位置する足摺岬。太平洋に突き出た展望台に立ってみれば、湾曲した水平線の両端が、地球が本当に丸いことを実感させてくれる。開ける視界は、実に270度以上に及ぶ。
そんな風光明媚な足摺岬のすぐ袂に、古代人の生活の痕跡がある。その名も「唐人駄場遺跡」。
この不思議な名前は、中国や朝鮮から来た異人を意味する「唐人」と、山中の平らな場所である「駄場」を組み合わせたもので、黒潮が最初に着岸する足摺の土地柄、古くから大陸との接点があったことを示しているのかもしれない。
唐人駄場の見どころは、山中に溶け込む巨石群だ。
山の中に密集する6~7メートル級の巨石群は、それだけで特別な意図を感じさせる気がするが、かつて世界最大級のストーンサークルが存在した場所でもある。
残念ながら “かつて” となってしまったのは、それを構成していた石の多くが撤去されたり埋め戻されたりして、広々とした公園になっているからだ。
何はともあれ、トレッキング感覚で巨石群を見ていこう。
まず、山道沿いから唐人駄場の看板を見てすぐに、「南のサークル」がある。配置が立体的で写真ではわかりにくいが、これもストーンサークルの一種なのだそう。
順路の案内板に沿って山道を登っていくと、その過程で次々に巨石が現れる。それらはどれも古代祭祀の祭場である磐座とされ、とりわけ海側からもよく見える磐座は、黒潮にのってやってくる船にとって、航海のよき目印となっていたと言われる。
たとえば、「鬼の包丁石」は、不自然なほどの鋭角を描く三角形の岩だ。まるで特別な技術で削ったように見えるが、人工的な細工は見当たらないのだそう。むしろ、自然の造形であることのほうが不思議に思える。
巨石群の中で最も表面積が広いのは「千畳敷石」だ。まるで高台にせり出した舞台のようで、千畳敷石の上に立てば、太平洋までを一気に見渡す眺望がある。天候によっては九州が見えることもあるそうで、かつては巫女たちが奉納神楽を舞った場所とされている。
山中にこうして巨石が密集しているのは、古代人が不思議な力でこれらを運び込んだから――ではなく、もともとの地質的な環境によるらしい。
組み合わさった岩と岩の間にはちょっとした空間があり、太古の昔、そこで人々が雨露をしのいだりしていたのだろうかと想像すると、胸が躍る。
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以上、友清哲氏の新刊『消えた日本史の謎』(知恵の森文庫)から再構成しました。謎の構造物、おかしな物体、奇妙な伝承、未解明のパワースポット…不思議をめぐる旅の記録です。
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