「樹状細胞ワクチン療法が、がん治療として有効である根拠は薄弱です。『活性化リンパ球療法』や『NK細胞療法』は、1980年代から試みられてきた旧世代の治療です。安全性の面でも自己免疫性疾患に似た副作用が問題になるはずです」
治療実績については「過去の論文データでおおよそ推測できます」と回答している。
「『過去の論文データ』が何を指すのかは不明ですが、患者さんの病状が、結果どうなったか(転帰)を誠実にしっかり追跡していれば、容易に生存成績データは出せるはずです。治療成績を示さずに、治療の有効性を語るのはナンセンスでしょう」(大場医師)
田口所長をはじめとする所属医師の医療倫理(モラル)観についても、首を傾げる。
「『外科専門医として豊富ながん治療経験』を有しているのならば、なぜ高額な費用を請求して根拠のない免疫療法ができるのでしょうか。まずは真摯に効果を検証するべきなのです」(同前)
こうした指摘に、同研究所はあらためてこう答えた。
「免疫療法にはいろんな見方があります。今回の取材が正しい情報の発信に繫がっていけばいいと思います」(広報)
たしかに、もっと悪質ながん治療は山ほどある。前出の若尾氏が指摘する。
「『金の延べ棒でがんが消える』という治療までありました。それに比べれば、免疫療法はもっともらしく見える。だから信じてしまうんです」
野放しのままだった免疫療法を規制する動きはある。
「2018年6月には未承認薬による治療のネット広告が原則禁止されました。また、7月31日付で、がん診療連携拠点病院を対象に、保険適用外の自由診療の免疫療法については原則、臨床研究、先進医療の枠組みでおこなうことも決まりました」(若尾氏)
だが成果は道半ばだという。あとは医師の良心に期待するしかない。医師ができる医療行為には以下の3条件が定められている。
1 適正な治療目的
2 適切な手段(医学的に妥当な方法)
3 患者の承諾
「条件を満たさなければ刑法35条の『正当業務行為』に反することになります」(同前)
医師たる者、この条件を肝に銘じてほしい。
(週刊FLASH 2018年12月11日号)