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人口増の最適解は「人を1%増やすには地域所得を1%増やせ」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.03.07 16:00 最終更新日:2022.01.11 07:44

人口増の最適解は「人を1%増やすには地域所得を1%増やせ」

 

 地域の人口を増やすとはどういうことなのか。社会活動家・法政大学教授の湯浅誠氏と、島根県で「持続可能な地域社会総合研究所」を運営する藤山浩氏が対談する。

 

 島根県では、スーパーの入口に地元の農家が持ってきた野菜を売っており、それが売れたら農家の収入になるという。

 

藤山 店に15%だけ手数料を払いますが、そのまま85%が自分の収入になります。自分で自由に値段をつける。今、それがすごく流行っています。頑張っとる人は1000万円プレイヤーです。

 

 

湯浅 地元のスーパーが「道の駅」みたいなことをやっているということですか?

 

藤山 産直市ね。それをスーパーの入口付近の一番いい場所でやっているんです。その代わり、毎日ちょっとずつ出さないと駄目ですよ。手を替え品を替え。間引き菜まで……。

 

湯浅 なるほど。人口を1%を増やすには、地域の所得を1%増やす必要があり、それは域外に流出している分の1%を取り戻せば見えてくるというのが、藤山さんの主張されている1%戦略ですよね。

 

藤山 ええ。行政が作成している「産業連関表」などをもとに、地域の経済循環の中でどれくらいのお金が域外に流出しているかを調べています。

 

 たとえば、島根県の高津川流域には7万人が住んでいて、ちょっと古いですが平成15年の試算で、このエリアの域外調達額は1420億円。これは、このエリアの所得総額1556億円にほぼ匹敵していました。稼ぎのほとんどが域外に出ていってしまっている計算です。

 

 また、家計調査をして個々の家庭レベルでも見ています。ある子育て世帯では「外食・アルコール」で年間8万円が町外流出、「肉類・菓子類」で年間10万円、灯油・ガス代で年間11万円というふうに、家計レベルで見ても、相当な部分が域外に流出してしまっています。

 

 3年かけて全国5つの圏域で試算してみましたが、地元で完結しているように見られがちな本当の田舎でも、3000~4000人ぐらいを1次経済圏としてやってみると、ひどい場合には7割ぐらい外で買ってしまっています。

 

 地元産品の割合は5~10%ですね。田舎でもそれです。逆に言えば、95%は域外から調達してきた全国流通の、同じようなものを食べている。そうしたら、そこに住む幸せって何なの? という話になりますよね。

 

湯浅 田舎でも、地元産品は5%から10%ですか……。

 

藤山 でも、その事実の指摘だけでは、人々は落ち込むだけです。そこは人口の話と変わらない。だから私たちは「所得の1%を取り戻すだけでいい」という1%戦略を掲げて、話を具体化しています。

 

 その際に使っているのが、英国の独立系シンクタンクNEF(New Economics Foundation)のLM3(Local Multiplier3)という地域内乗数の考え方です。3回分の取引でどれだけのお金が地域に落ちたかという視点で集計されます。

 

 たとえば「地元でパンをつくる意味」です。LM3の計算式を用いれば、同じ1000円分のパンを消費しても、域外で生産されたパンを販売するだけであれば、「地元所得創出額」は110円にすぎません。他方、地元の原料を使い、地元で製造した「完全地元パン」であれば、460円も「地元所得創出額」となります。

 

 同じように、1000円分の生鮮野菜を買ったとしても、域外生産物を扱っている全国チェーンのスーパーなら域内所得は110円ですが、先ほどの産直市なら503円にもなります。

 

 この手法は外食にも何にでも応用できる。そうやって自分たちの暮らしを見直していけば、大規模な新規産業が生まれなくても、所得1%増は可能だと伝えて回っています。

 

湯浅 地域外に流出しているお金を地域内消費によって取り戻すことが重要というわけですね。

 

 

 以上、『子どもが増えた!~明石市 人口増・税収増の自治体経営』(光文社新書)をもとに再構成しました。湯浅誠氏、泉房穂氏、藻谷浩介氏、村木厚子氏、 藤山浩氏らが、子ども増・人口増・税収増の方法論について考えます。

 

●『子どもが増えた!』詳細はこちら

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