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50億年後の宇宙を大予想!太陽と地球と天の川が消滅して…
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.03.08 16:00 最終更新日:2019.03.08 16:00
私たちは138億歳の宇宙に住んでいるが、このあと、宇宙はどのように進化していくのだろうか。
宇宙の未来予想図は大きく分類すると、以下の4通りになる。
●ビッグ・フリーズ
フリーズ (freeze) は凍りつくという意味である。この言葉から想像がつくだろうが、宇宙がどんどん冷えていくシナリオである。最終的には絶対零度(マイナス273度)に近づいていき、まさに、ビッグ・フリーズを迎える。
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●ビッグ・リップ
リップ(rip)は強く引き裂かれることを意味する。暗黒エネルギーがある状態の場合、宇宙膨張が急速に進行し、数千億年後には宇宙全体の膨張速度が光速を超えてしまう。このとき、宇宙は原子レベルまで引き裂かれ、宇宙は破壊され死に至る。最悪の未来予想図だ。
●ビッグ・クランチ
クランチ(crunch)は潰れることを意味する。現在、宇宙は膨張しているが、宇宙の中に膨張を止めるほどの物質があると(例えば、暗黒エネルギーが物質に転化する場合など)、重力の働きで膨張にブレーキがかかる。
その場合、膨張はいずれ止まり、そして宇宙は収縮に転じていく。最終的には、宇宙はまた一つの点のような小さな領域に集まる。これを、ビッグ・クランチという。
●サイクリック宇宙
ビッグ・クランチの後、宇宙はどうなるのだろう。また、ビッグバンのような出来事が起きて、宇宙は膨張に転じる可能性がある。つまり、膨張 → 収縮 → 膨張 → 収縮というように、いつまでも振動するかのように宇宙が続いていく可能性がある。これを「サイクリック宇宙モデル」と呼ぶ。
私たちの住む宇宙の行く末には、不確定要素はあるが、以下ではビッグ・フリーズのシナリオにしたがって、宇宙の未来予想図を見ていくことにしよう。
50億年後の宇宙では、まず、太陽が死ぬ。太陽のような恒星のエネルギー源は熱核融合である。水素原子核(陽子)をヘリウム原子核に熱核融合してエネルギーを出している。
しかし、熱核融合は永遠には続かない。水素原子核が枯渇すれば止まるからだ。太陽程度の質量の恒星の寿命は100億年である。現在、太陽の年齢は約50億歳なので、熱核融合が続くのはあと50億年ということになる。
太陽は外層部が広がり、赤色巨星へと進化していく。水星や金星は太陽の外層部に呑み込まれ、地球もその運命を辿る。太陽の死は、地球の死も意味する。
50億年後に起こる、もう一つの一大イベントは、「天の川が消える日」を迎えることである。天の川銀河はアンドロメダ銀河に約40億年後に衝突し始めるので、50億年後にはもう天の川はその体をなしていない。
70億年後には2つの銀河は完全に合体し、1つの巨大な銀河になっている。
その後も、宇宙膨張は快調に続く。そのため、1000億年後には、隣の銀河が一つも見えない宇宙になっている。「レッドアウト」と呼ばれる現象だ。宇宙膨張が進行して、隣の銀河の遠ざかっていくスピードが光速を超えてしまうのだ。
ある銀河に住んでいる人から見れば、宇宙には自分たちの住んでいる銀河しか見えない。隣の銀河が見えなければ、宇宙全体の情報を得ることはできない。そもそも、この宇宙が膨張していることは、多数の銀河の観測からわかったことだ。
1000億年後の宇宙のある銀河で人類のような知的生命体がいたとしよう。彼らに宇宙の正体を見破ることができるだろうか。宇宙を眺めても、自分たちの住んでいる巨大な銀河しか見えない。隣の銀河が見えないので、宇宙が膨張していることもわからない。ビッグバンの観測的証拠である宇宙マイクロ波背景放射も観測できない。
彼らには宇宙は静的なものであり、はるか悠久の過去から変わらず存在し、今後も何事も変化はないだろうと思うだろう。ビッグバン宇宙論を知ることもなく、まさに定常宇宙論を信奉するだろう。
とにかく、宇宙に見えるのは自分たちの住んでいる銀河しかない。それは特別なものとして崇められるだろう。彼らはこう語るかもしれない。
「私たちは神である!」
1000億年後には、人類よりはるかに高等な知的生命体が存在するかもしれない。しかし、それでも宇宙を正しく理解できない時代に突入しているのである。
私たちは宇宙年齢138億歳の今の時代に生きていて本当によかったのである。
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以上、谷口義明氏の新刊『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』(光文社新書)をもとに再構成しました。ブラックホールはいつ生まれ、どのように育ち、どのような運命をたどるのか。現代天文学が描く、宇宙の過去・現在・そして鮮烈の未来予想図です。