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工場勤めから一念発起、コンサートグッズ会社で勝負する男

ライフ・マネー 投稿日:2019.04.18 11:00FLASH編集部

工場勤めから一念発起、コンサートグッズ会社で勝負する男

 

 日本の音楽業界ではコンサートの人気が高く、会場不足が深刻化しているという。インターネットなどで新曲が聴けるために、CDが売れなくなった。だがそれが、コンサートが盛んになった理由のひとつになっている。

 

 業界の現状をそう説明する大嶋俊一さん(41)は、コンサートグッズの企画、デザイン、製作を手がける会社を経営している。時代の潮流にうまく乗って、2019年で創業10年めを迎えようとしている。

 

 

「弊社は音楽業界のクライアントが多く、いわゆるコンサートグッズが、売り上げの90%を占めています。グッズはキーホルダー、トートバッグ、スマホカバーなどです。2018年も、多くの有名タレントの案件を手がけました。

 

 企画してデザインを作り、クライアントに確認して、おもに中国の工場で生産しています。初めは思ったような商品ができず、中国まで行って指導したり、大変でした。いまでは改善されて、弊社が求める品質をクリアできるようになりました」

 

 大嶋さんは、アルミサッシ店の2人兄弟の兄。中学、高校時代はアルバイトで、父の仕事を手伝った。

 

「親父の背中を見ていて、『大学を卒業したら、親父のようにタオルを巻いて作業服を着て、ガラスを切って窓枠にはめたりしているな』と想像していました。ほかの仕事は考えもしなかった。

 

 ところが19歳の夏、突然親父が、くも膜下出血で亡くなりました。45歳でした。これが、いちばんの転機になった。僕は親父と一緒に過ごした人生より、親父がいない人生のほうが長くなってしまった」

 

 父親の死が、大学2年時の前期試験にぶつかったため、単位不足が尾を引いた。4年生の後期まで、就職活動をする余裕もなかった。しかも、大学4年生になってもやりたい仕事はなかった。

 

 卒業後、就職もせずパチンコ屋に通う毎日。1カ月も続けると、さすがにこれではいけないと思い、今度はパチンコ屋でバイト。見かねた友人の父親が、自分の工場で働かないかと声をかけてくれた。営業希望だったが、2年間、工場で検品の仕事をした。

 

「工場の仕事は、仲間もできて、それなりに楽しかった。でも24歳になると、『このままでいいのか』と思うようになるわけです。埼玉生まれですが、1回ぐらいは東京で一人暮らしをして、勝負してみたいという気持ちがありました。

 

 昼休みに車の中でコンビニ弁当を食べながら、リクルートの雑誌を見ていたときです。10行ほどの小さな募集記事に目がとまり、この会社に入りたいと強く思った。

 

 工場勤めの者からすると、タレントのグッズとか、コンサートグッズ、デザイン、企画と書いてあるだけで華やかに見えて……。それで、面接を受けに行きました」

 

 2002年、24歳のとき、このグッズ製作会社に入社。そのまま、いまの仕事に繫がっている。営業を担当したが、芸能界の超夜型の仕事のうえに、朝も昼も働いた。

 

「僕の経験則から言えることですが、超過酷な環境を乗り切った人間は、普通の人の3倍ぐらいの仕事をこなすし、いろんな能力が自然についてくると思うんです」

 

 新人が入ってきては辞めていく環境。だが、いい仲間に恵まれ、互いに助け合い、8年間勤めた。「独立して勝負したかった」。2010年3月末、32歳のときに退社する。同年の4月20日に、現在の会社を登記した。2つめの転機となる。

 

「最初の仕事は、会社を辞めた3日後に連絡が入りました。会社を辞めたことを話すと、相手は『ぜひとも大嶋さんに』と、会社の登記日まで待ってくれました。

 

 大手のレコード会社で、予算が1000万円を超える大きな仕事。それも、製造費などを前払いでもらえたんです。本当に幸運なスタートが切れました」

 

 現在社員は9名。少数精鋭主義をとり、営業が6人、そのうちの4人が前の会社の同僚という構成だ。

 

「仲間に恵まれ、クライアントや協力会社にも恵まれている。悩みはあるが、いまのように、毎日が楽しい日々をできるだけ長く続けたい」

 

 追い風に恵まれてきた大嶋さん。これからも風に乗り、成長を続けていくのだろう。


(週刊FLASH 2019年4月9日号)

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