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国道16号線から始まる「介護ビジネス」どう取り込むのか
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.04.19 14:00 最終更新日:2019.04.19 14:00
政府は「人生100年時代構想」として、元気で動ける高齢者を増やし、医療介護の必要な人を減らそうとしています。いわゆるピンピンコロリで、こうした元気な老人が増えれば、医療費や介護費は減少します。
現在の制度では、地域医療施設と各種の介護施設、在宅介護が混在していますが、これだけでは「人生100年時代構想」は実現できません。
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今は制度化されていませんが、スポーツ振興や健康長寿、娯楽、社会活動、観光、文化、教育、保育といったコンテンツが取り入れられ、リンクしていくはずです。それらはいずれ制度化され、補助金行政や公共事業の枠に入ってくるはずです。
その一端がCCRCと呼ばれるもので、リタイアした人々のケア・介護を持続するコミュニティを構築する動きです。高齢者が健康なうちに入居し、終身で過ごすことが可能な生活共同体です。
この集合住宅の考え方は1970年代のアメリカで始まっており、「アクティブ・シニアタウン」などと言い換えることもあります。
CCRCの「R」はリタイアメント(引退)の略ですが、個人的には「リ・スタート(再出発)」の略が望ましいと思っています。
今はまだ実験段階ですが、たとえば千葉県の稲毛にあるマンションではCCRCを取り入れたマンションが造られました。マンション単位にとどまらず、市町村単位の地域レベルで実施しようとしているところもあります。
入居者がすべて元気なシニアで、健康的な食事、さまざまなアクティビティ、趣味仲間がいる生活という、理想的な共同体を目指しているのです。
地域でCCRCを育むには、基盤としてユニバーサル・インフラ、簡単に言えばバリアフリーを地域単位で造り上げる必要があります。都市部でも、個々の施設ではバリアフリーが進んでいますが、街やインフラレベルではまだまだ道半ばです。
その先駆けとなるのは、2020年の東京パラリンピックになるでしょう。東京パラリンピックで会得した方法論を地域にうまく展開していく。さらに、スポーツ振興施設や健康長寿活動を上手に構築、その上に地域医療と介護を持ってくる必要があります。
さて、地方ではCCRCの実験が始まりましたが、都心周辺はどうなっているのでしょうか?
首都圏を例に出すと、首都圏をぐるりと囲む国道16号線沿い、東京駅から約40キロメートル圏内には、団塊ジュニア世代が大勢住んでいます。町田、相模原、川越、柏などですが、自分たちだけではなく、全国各地いろいろな出身地から両親を呼び寄せて近くに住まわせ、家族3世代が近所で生活している人がとても多いのです。
「故郷は国道16号線沿い」という人が多いということは、このあたりが近い将来、最初に医療・介護などの大問題が発生する地域であることを意味します。
これまでは3世帯で住んできましたが、高齢化が進むにつれて空き家がどんどん増えて、国道16号線から都心部までの地帯は人口がだんだんとスポンジ化していきます。亡くなった人の空き家や空き地が残されて、増殖していくイメージです。
人口は急激に減るわけではないので、たとえばタワーマンションに集約されていくことが予想されますが、一方で空き家や空きスペースをどうやって利用していくかが求められます。空き家、空き地、空きスペースをみんなで共有するような新ビジネスを開発していくことが、今後、東京という大都市を維持していくために重要になっていきます。
数十年後に人口の40%が高齢者になることを考えれば、国道16号線沿いにある空き家は、5~6軒に1軒が老人ホームに改修されるかもしれません。
施設だけでなく、在宅介護などの制度も構築されていくでしょう。介護をしたい人、介護をしてもらいたい人をうまくマッチングさせるような仕組み、介護マッチングがビジネスになるはずです。
現状、高齢者の割合は3割弱ですが、その人たちが全貯蓄1800兆円のうち70%を持っているといわれます。その潤沢な資金を引き出せるような、高齢者が元気で生きていけるスポーツ施設、健康長寿施設、文化施設の充実も重要になってきます。
いずれにせよ、仕事が見つからない人も、この国道16号線沿いで介護関係の仕事を探せば、必ず見つかります。さらに、少子高齢化は日本のすぐ後に中国や韓国、欧米諸国でやってくるので、いち早く仕組みを創れば、トップランナーとしてそのビジネスモデルを外販して総取りすることも可能なのです。
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以上、川原秀仁氏の近刊『プラットフォームビジネスの最強法則 すべての産業は統合化される』(光文社)をもとに再構成しました。施設建築の参謀役が語った、誰も思いつかなかった「これからの稼ぎ方」です。