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AKB48のメンバー数でわかる「人生に役立つ算数」の考え方
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.04.30 16:00 最終更新日:2019.04.30 16:00
現在の日本は経済格差が拡大している。教育問題も、当然、この問題を避けて通ることはできない。
1990年代の半ばから2000年代の半ばにかけて、所得面で中間層が抜け落ちてきていることは様々なところで指摘されている。
その背景には正社員の減少、そして非正規雇用者の増加があるが、実際、内閣府が2009年7月に発表した年次経済財政報告では、「非正規雇用化の動きは最近になって始まったものではなく、1984年の非正規雇用比率15.3%から2008年の34.1%に至るまで一貫して上昇している」と述べられている。
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そしてその時期は、ちょうど「ゆとり化」の流れがクライマックスに向かって強まってきた時期と重なる。それから直ちに予想できることは、恵まれた家庭の子どもたちは学習塾や予備校に通ったり家庭教師を付けたりして学び、そうでない子どもたちは学校外の学習時間(学習塾・予備校・家庭教師の時間を含む)が少ない集団に入ってしまうことである。
平成21年度文部科学白書では、全国学力・学習状況調査の正答率と家庭の世帯年収との関係に関して、5つの政令指定都市より100校を対象に追加調査を行った結果を示していて、世帯年収と正答率はだいたい比例していることが理解できる。
1990年代の半ばから2000年代の半ばにかけて拡大した経済格差は、子どもたちの教育格差、そして学力格差を生んだことは確かだろう。
以上を踏まえて、これからの日本の教育問題を考えると、格差に関して「先進国」とも言えるアメリカの対策は参考になる。
リチャード・マーネンとフランク・レビーは、『新基礎知識(New Basic Skills)』という著書の中で、大学を卒業していない高校卒業者が、現代の雇用市場において給料の高い職につくには、特定の「基礎知識」が必須であると述べている。この「基礎知識」には、最低でも「9年生レベルの数学の技法とその概念の理解」が含まれている。「9年生レベルの数学」は、日本のおよそ中学レベルの数学だと考えてよい。
もっとも、9年生レベルの数学よりも若干平易な算数+αレベルの数学であっても、よく理解して自由自在に使えるようにすることが「算数・数学を人生で役立たせる」ために意義あることだと考える。
具体的にはどのようなことか。ここで割り算の発想を紹介しよう。「割り算」の発想はどのようなものかと聞かれれば、次のような例はごく普通に思い付くだろう。
20個あるミカンを4人に等しく分けるとき、1人分の個数を求めるような「いくつかの物を均等に分ける」こと。200キロメートルの距離を時速40キロメートルで進むとき、時間を求めるような「距離と速さから所要時間を考える」こと。90グラムの水に10グラムの食塩を溶かすとき、濃度を求めるような「水に食塩を溶かすときの濃度を考える」こと、等々。
ここでは、それとは異なる割り算の発想を紹介しよう。2016年の2月ごろ、「(国外を除くAKB、SKE、NMB、HKT、NGTからなる)当時のAKB48グループは、直近の2か月で7人も卒業を表明している。この数は多過ぎではないか」という内容の話題があちこちで大きく取り上げられた。
しかし、この数字は多過ぎではなく、むしろバランスのよいものであることを割り算の発想を用いて説明しよう。ただし前提として、メンバーは平均して7年~8年在籍するものとする。
2か月で7人が卒業ということは、1年で42人が卒業ということである。もし、AKB48グループのメンバーの人数が、増えることもなく減ることもない状態が続くことを考えると、毎年、42人が卒業して、42人が新加入することになる。
そこで、毎年加入した42人がちょうど7年在籍して卒業すると仮定するならば、AKB48グループのメンバー全員の在籍人数は、毎年42×7人となり、294人となる。
2016年の2月ごろのAKB48グループの在籍人数は、307人だった。したがって、1年で42人が卒業という人数は、在籍期間を7年と仮定すると、在籍人数が300人強の状態にマッチした数だといえるだろう。
ちなみに、在籍人数が307人で在籍期間が7年という状態が増えることもなく減ることもなく続く場合を想定すると、307を7で割って43.857…という数が出てくる。
なので、毎年約43.9人の新人が加入して、毎年約43.9人のベテランが卒業する状態がちょうど適当となる。以上から、「2か月で7人の卒業」は、大体バランスのよい数字だといえることが分かる。
同様な発想による簡単な応用例を一つ挙げよう。
ある町では、毎年約200人が誕生し、約200人が亡くなっている状態がずっと続いているとする。そして、平均寿命も約70歳の状態が続いているとする。ここで説明した発想から、この町の人口は約200×70=14000(人)であることが分かる。
これが、人生に役立つ算数・数学の考え方の一例だ。
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以上、芳沢光雄氏の近刊『「%」が分からない大学生 日本の数学教育の致命的欠陥』(光文社新書)をもとに再構成しました。日本の数学教育に危機感を抱いてきた著者が、これからの「学び」のあり方を問い直します。
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