人間だれしも、ガンになるリスクを抱えている。「備えあれば憂いなし」とはいうものの、闘病経験のない者にとっては、未知の恐怖がある。そこで、前立腺ガン、腰骨の悪性リンパ腫、膵臓ガンを克服した元政治家の松浪健四郎さん(72)を訪ね、ガンの予兆を感じた「いま思えばあのとき……」を聞いた。
「『おしっこの回数が多くなったなあ』と気にはなっていましたが、それも年齢のせいだと思っていました。だから泌尿器科の先生に『念のために検査をしましょう』と言われたときも、本当に『念のため』でした」
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そう苦笑する松浪さんは、CTとMRI検査を受診した2018年5月に、初期の前立腺ガンが見つかった。
「治療法は手術、放射線、ホルモン療法の3択でした。先生に、いちばん楽な治療法を聞くと、ホルモン療法をすすめられました。デメリットを『性欲がなくなる』と説明されましたが『それは(なくなっても)かまいません』と答えました(笑)」
そしてホルモン療法開始後、検査をしていたら、腰骨の中に悪性リンパ腫が偶然見つかった。さらにその後、膵臓ガンも発見されたのだ。
「すべてのガンが、転移ではなく新たに発生したものでした。ただおかげさまで、初期ばかり。悪性リンパ腫は抗ガン剤治療を選択して、膵臓ガンは命に関わるということで、9時間かけて摘出手術をしていただきました」
初期の膵臓ガンは無症状だと思われがちだが、8割の患者に、腹痛、食欲不振、腹部の膨満感、糖尿病、白目に黄疸が出る、背中に痛みが出るなどの症状が見られるという。
しかし、ほかの臓器に囲まれており、早期発見は困難だ。松浪さんの場合、最初のガンが見つかり、精密検査を受けたことから、膵臓ガンを早期に見つけることができた。
抗ガン剤の影響で髪の毛が抜け、トレードマークのちょんまげは結えなくなってしまった。今は医療用のかつらを着ける。
「今は『国民の2人に1人がガンになる』といわれる時代。『自分も必ずガンになる』。そう思って間違いないですね」
まつなみけんしろう
大阪府出身 全日本学生レスリング選手権・全米レスリング選手権優勝。専修大教授、衆院議員を経て、2011年から日体大理事長
(週刊FLASH 2019年4月23日号)