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【食堂のおばちゃんの人生相談】40歳・自動車販売業のお悩み
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.05.27 11:00 最終更新日:2019.05.27 13:35
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/哲さん(40)自動車販売】
家にビデオデッキが来た昭和60年からずっと、『サザエさん』の録画を続けている。今は再放送もないし、DVD化やCS放送も望めないので、録画は貴重だと力説しても、友人たちは誰も理解してくれず、僕をバカにする。どうすれば理解してもらえるのだろう? それとも僕が間違っているのだろうか?
【山口先生のお答え】
いいえ、哲さん。あなたは少しも間違っていません。私だって昔夢中で『サイボーグ009』『忍風カムイ外伝』『どろろと百鬼丸』等のアニメを観ていた頃、ビデオデッキが家にあったら、きっと全部録画したはずです。
これはアニメに限ったことではありません。昔はビデオが貴重品だったので、放送局でもドラマはどんどん重ね録りしていたため、現在まったく映像が残っていない優れた作品が沢山あるのです。
そんな中、たまたま個人が保存していた映像で片鱗が窺える作品もあって、貴重な資料になっています。いいえ、資料的な価値があろうとなかろうと、大好きな作品を繰り返し観たいと願うのは、ファンなら当然です。
アニメ、ドラマ、映画、みんな昔は「下らない娯楽」と冷遇されていましたが、今や映像文化としての地位を確立しています。あなたの友人たちは、そういう映像文化の価値も、それを愛する人たちの気持ちも、まったく理解していません。
そういう人に自分のわからない価値感を理解させようとするのは土台、無理です。また、理解してもらう必要もないと思います。
哲さん、あなたの気持ちに共感し、あなたの努力を賞賛する人は、私をはじめ日本中に大勢います。試しに「サザエさん」のファンクラブにお便りしてご覧なさい。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、最新刊『夜の塩』が発売中