最新号紹介

毎週火曜日発売

通巻1522号
7月23日30日合併号
7月9日発売

詳細・購入

最新号紹介

FLASH DIAMOND

5月30日増刊号
4月30日発売

詳細・購入

FLASHデジタル写真集

FLASHデジタル写真集

【第23弾】6月28日より好評発売中!

詳細・購入

ライフ・マネーライフ・マネー

ライフ・マネーライフ・マネー

太陽の爆発現象で「あわや核戦争」の危機がライフ・マネー 2019.07.06

 

 イギリスの天文学者リチャード・キャリントンは、毎日熱心に黒点観測を続ける中、1859年9月1日の観測中に、ある大黒点の周辺が突然明るく輝き出したのに気がついた。しかし、その輝点は場所を移動しながら数分で消えてしまった。

 

 イギリスのアマチュア天文家であるリチャード・ホジソンも、キャリントンの天文台から30キロメートルあまりしか離れていない、同じロンドン近郊でこの現象を観測していた。

 

 

 これは、太陽面で起こる爆発である「太陽フレア」が観測された最初の例である。

 

 太陽フレアは、太陽表面の磁場のエネルギーが急激に熱などに変わる現象である。大規模なフレアの場合、解放されるエネルギーは、大きな水素爆弾の1億倍という人間のスケールをはるかに超えたものであり、大地震・火山の大噴火と比べても100万倍にのぼるという、地球では想像できない大きさである。

 

 1859年のキャリントンのフレアで注目すべきは、その大きさだけでなく、その直後に見られた地球上の出来事である。まず翌日になって、大きな磁気嵐が発生した。

 

 それとともに世界各地でオーロラが見られ、しかも異様に明るかった。通常オーロラは極地方で見られるものだが、はるか南のハワイやキューバ、アフリカのサハラ以南、そして日本でもオーロラが見られた。

 

 それだけなら前代未聞の奇観というだけなのだが、さらに欧米の電信網が故障するという事態が発生した。電信機が壊れたり火事が発生したり、技手が感電したりということが起こったのである。

 

 当時、日本はまだ江戸時代だが、世界は電気の時代を迎えていて、電信で瞬時に情報を送るというのは欧米ではすでに実用化していた。遠隔の場所を電線でつないでモールス信号で通信をするのである。

 

 現在の知識では、キャリントンらが見たフレアにともなって太陽から物質が大規模に惑星間空間に放出され、それが地球磁場にぶつかったと解釈できる。

 

 それにより大きな磁気嵐が発生したため、電信用の電線が長距離にわたって引かれていたところに異常電流が流れて、様々な故障が発生したのである。

 

 太陽フレアの時にはX線だけでなく太陽からの電波も桁違いに強くなる。次に紹介するのは、コロラド大学のデローレス・ニップらが分析した、その電波の影響の例である。

 

 1967年5月23日、北極周辺でソビエト連邦(当時)からのミサイル攻撃をとらえるべく監視を行っていたアメリカのレーダーに、強烈な電波が入ってきて探査が不可能になるという事件が起こった。しかもその後で無線通信までもが不可能になるという事態になった。

 

 この当時は冷戦下の緊張状態である。核戦争が一触即発という事態に至ったキューバ危機からまだ5年も経っていない。この事態を受けてアメリカ空軍は、ソ連が軍事攻撃のために出した妨害電波が原因であるとして、ただちに攻撃の準備を行うに至った。

 

 実はこの頃、大きな活動領域が太陽面上に現れていた。個々の黒点が非常に大きいというわけではなかったものの、活動領域全体の東西の広がりが経度で30度を超えるような巨大さであった。

 

 そのため多くのフレアを起こしたが、特に5月23日には、3時間の間に3つのフレアが連続して発生した。2番目のフレアは白色光フレアを起こし、3番目のフレアは20世紀最大の電波フレアとなる強烈なものだった。

 

 もともと太陽高度が低い高緯度の、しかも夕方の時間帯にフレアが起こったため、レーダーのアンテナにフレアの電波が入り、レーダー探査を妨害したのであった。

 

 太陽フレアが原因であわや核戦争にまでつながりかねない軍事行動を開始するという事態になったが、アメリカ空軍はこの頃には可視光と電波による太陽活動の監視も行っていた。

 

 そこでとらえた太陽フレアの発生状況も直ちに伝えられ、電波の障害は太陽のせいであるという結論になり、攻撃準備は中止された。

 

 太陽嵐が起こす様々な被害は、気象災害と同様に天災であるととらえられているが、場合によっては最悪の人災にもつながりかねないということをこの事件は示している。

 

 太陽の現象も気象現象と同じように、監視すること、可能な範囲で予測すること、そしてそれらの情報を速やかに流通させることが、天災であれ人災であれ防ぐ手段である。

 

 軍事目的ではあるが、アメリカ空軍はこの事件の前後から宇宙天気現象の監視体制を大幅に拡充しているのだ。

 

 

 以上、花岡庸一郎氏の新刊『太陽は地球と人類にどう影響を与えているか』(光文社新書)を元に再構成しました。いま、社会的に注目される「太陽物理学」を豊富な観測データを用いてわかりやすく解説します。

 

●『太陽は地球と人類にどう影響を与えているか』詳細はこちら

ライフ・マネー一覧をもっと見る

ライフ・マネー 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事

最新号紹介

グラビアBEST

2019年初夏号
5月24日発売

詳細・購入

最新号紹介

PlatinumFLASH

3月8日発売
表紙:白石麻衣

詳細・購入