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帰省して中古自転車を購入「吉田戦車」思い出の道をたどる
バラエティFLASH編集部
記事投稿日:2019.08.21 11:00 最終更新日:2019.09.24 14:46
帰省。親が、「急ぐわけではないが、物置でホコリをかぶっている、電動アシスト自転車と子供自転車を処分したい」という。
電アシ(と略す)は、10年ぐらい前に母親が買ったもの。ウォーキングをやっているため歩いてばかりいて、あまり乗らなかったらしい。なぜ買ったんだ。
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子供自転車は「孫、遊びに来るでしょ」と、ご近所からもらったという幼児用の小さいもの。姪もうちの子も、ほとんど乗らないうちにあっという間に大きくなり、乗れなくなってしまった。
電アシを買った、長年なじみの自転車店にたのめば、持っていってくれるはずという。母と外出した際、その自転車店に寄ってみることにした。私が中学~高校生の頃に乗っていた自転車もここで買ったものであり、数十年ぶりにご主人にあいさつした。
回収は快諾してもらったが、新車を買ったわけでもないのに申し訳ないな……、と思う私の視界に、くすんだ佇まいの折りたたみ自転車が目に入った。店先に何台か並べてある、中古車の中の一台。
「これ、売ってるんですか?」と口に出した時には、すでに購入を決めていた気がする。試乗させてもらったところ、古びた見た目なりの乗り味だったが、こりゃあかん、というほどでもないので買うことにした。7500円の値札がついていたが、防犯登録料込みで7000円にしてくれた。
フレームに「CHEVROLET」の文字。シボレーか。いわゆる外車ブランド自転車というやつですね。キャラ商品みたいな。新車を買おうと真剣に悩む時には、こういってはなんだがあまり候補にあがらないタイプのものだが、まあいい。
タイヤは16インチ。6段変速。放置して錆びまくった状態のものをレストアしたらしく、黒く再塗装されたハンドルまわりも、サビサビの手ざわりを残している。ネットで調べても「これだ」という車種は出てこなかったが、18インチの同タイプが2万8000円ぐらいで売られていた。
帰省した時、自転車に乗りたいなーと、ずっと思っていた。車で走ってても気持ちいいんですよ、故郷の、広大な田園の中に散居が点在する、胆沢扇状地。
その広い土地を走るためには、東京で乗ってるような、タイヤがやや太いクロスバイクが一番だと思うのだが、その手の新車を買って、実家に置いて、さて何度乗るんだろうと考えはじめると、購入意欲はそこでストップしてしまうのだった。
そこに今回の、フリマでレトロだけど骨董的価値はない皿でも買うような、気楽な中古車買い。自転車として、このまま終わるかもしれなかったこいつに、最後のおつとめをさせてやれる、みたいな気持ちにもなって、悪くない買いものをしたような気がする。
変速など確認しつつ、青々とした水田の間を走ってみる。小学生の頃、カブトムシをとりに行くためにこの道を通ったな、と思った。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)、『出かけ親1』『忍風! 肉とめし2』(ともに小学館)が発売中
(週刊FLASH 2019年9月3日号)