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【東京「古民家」再生記】(4)猛烈なホコリの中で気絶寸前の大掃除
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2016.06.05 10:00 最終更新日:2016.06.05 10:00
200万円ポッキリで奥多摩に古民家を買った。晴れて登記も終わり、いよいよ改修工事……といきたいところだが、その前に物置や屋根裏に残された膨大な「置きみやげ」を整理しないといけない。
まずは物置の整理から始めよう。
中に詰まっている「ウゾームゾー」を片っ端から外に出して並べていくことにした。スコップ、スキ、クワ、斧、のこぎり……農耕具や木こり道具が次々と運び出される。どれもが古錆びていて、使い物にならなさそうだ。背負子も出てきた。車道が開通するまでは大いに活躍したに違いない。
奥多摩町は95%以上の土地がスギやヒノキなどの林野で占められている。かつては活気があった林業も、外国産の木材に押されて、すっかり衰退してしまった。現在では過疎化が進んで、ご近所にも高齢の老人が目立つ。
この村は、もしかしたら「都心から最も近い限界集落」ではないだろうか……などと考えながら荷物を運び出した。
次に「旧キッチン」を整理することにする。トタンのドアをこじ開けて、懐中電灯を照らしながら、そろりそろりと足を踏み入れる。おそらくもう何十年も直射日光に当たっていない内部は、空気が淀んでホコリっぽく、ほんのりとカビ臭い。無数のクモの巣が張っている。アタマになにか触れた。ギョッとして振り向くと、天井から垂れ下がった荒縄だった。
キッチンの棚はカラッポだ。シンクの下を開けてみた。なにか入っている。黒っぽいボトルだ。懐中電灯を当ててみると、それは10年以上は放置された醤油だった。
ほかにはなにもなさそうだな。さっさと帰ろうと思いながらふと照らしたキッチンの奥に、残念ながら、もうひとつドアを発見してしまった。……嫌だなあ。嫌だけど仕方ない。
意を決して、ゆっくりとトタン張りのドアを開く。壁に設けた木組みの棚に、雑多なモノがホコリをかぶって並んでいる。足下を見ると、大量の動物の糞が。タヌキあたりが巣にしていたんだろうか。
そういえばさっきの物置に貂かなにかの剥製があったが、ここのご主人が仕留めたものだろうか。あとから地元猟友会のバッジも出てきたし。
それにしてもブキミである。奥多摩はマムシの生息地だし、ムカデや毒グモなら、いくらでも潜んでいそうだ。長靴でもはいてくればよかったかなあ。 そんなことを後悔しながら、奥に足を踏み入れた瞬間、ズボッと床板が抜けた。家の北側で湿気が多く、木板が腐っていたのだ。
ここからはいろんなモノが出てきた。古い食器類は、すっかり朽ち果てた床板に混じって出てきたが、おそらく入っていたダンボールが腐食してしまったんだろう。
棚からは電動餅つき器や釜が出てきた。隣が旧キッチンだから、かつてはここがお勝手の一部だったのかもしれない。
さらに奥からは立派な文机も出てきた。引き出しの中に敷かれた新聞紙を見ると、昭和55年。おそらくその頃にしまい込まれ、30年近く、ここで眠っていたのだろう。
続いて屋根裏である。
恐る恐るハシゴを登り、暗闇の中、懐中電灯を照らす。最初に浮かび上がったのは、簀巻きにしたムシロ。大きな土瓶がふたつ。ドリフで落っこちてきたような大きな金ダライがひとつ。そして立派な桶がふたつ。かつて水でも汲んで運んだものだろうか……と思っていたら、あとからそれを見た関西出身の友人が叫んだ。
「オマエ、これ、『肥担ぎ』やで!!」
どうやら肥溜めから糞尿を運ぶ桶らしいのだ。
そのあとは大掃除だ。おそらく何十年も掃除なんかしなかったんだろう。ホウキで掃くたびに、猛烈なホコリが舞い上がる。マスクをしていても、むせ返るくらいのホコリだ。ものすごい量の鼻水が流れ落ちてくる。身体中の水分が流れ出てしまいそうだ。
巻き上がるホコリの中でホワイトアウトしかけながら、掃きだした塵を、片っ端からゴミ袋に捨てる。ようやく作業が終わって階下に降りると、新品のマスクが真っ黒に変色し、その日一日、くしゃみが止まらなかった。
古民家改修とは、「ホコリとハナミズとの格闘」と心得よう。
【これまでにかかったお金】
計 212万2190円
【今回かかったお金】
中古自動車(ホンダアクティ660cc)23万8420円
任意保険 3万8610円
駐車場出入口に敷く鋼材 4851円
ご近所への手土産(菓子折など) 5950円