ライフ・マネー
通販広告の鉄板勝ちパターンは『小公女型』の商品説明
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.11.29 16:00 最終更新日:2019.11.29 16:00
通販の広告って、なんとなく似てるよね……。
多くの方がテレビショッピングなどの通販広告を見て、そんな感想を持たれると思います。
【関連記事:高評価を偽装…通販サイトに潜む「偽レビュー」見抜くコツは?】
そう、事実、通販の広告は似ています。商品を隠したらもはや区別がつかないくらい、通販の広告はうり二つにできているのです。
「差別化」がマーケティングの常識とされるこの時代において、なぜ通販会社はあえて似たような広告を作るのか。答えはもちろん「そのほうが売れるから」。
すなわち、通販広告には勝ちパターンが存在し、制作者側はその勝ちパターンに基づいて広告を制作する、だから似たような広告になってしまうのです。
何を隠そう、そのような勝ちパターンが形成されたのが、九州という土地柄。もともとテレビを利用した通販広告は、地方の企業が中央の大手に勝つための戦略として、九州の一食品事業者から始まったものでした。
「広告は認知を広げるための『作品』であるべき」、という考え方が支配的だった中で、はじめは異端であったこのやり方。ところが、効果はてきめん。評判を聞きつけた同郷の事業者がこぞってこのノウハウを学び、各社が様々に試行錯誤することで、テレビ通販のワザは急速に磨き上げられていきます。
そんな通販広告の中で培われた各種の勝ちパターン、つまり成功のための『鉄板法則』にはどのようなものがあるでしょうか。たとえば、しっかりと商品を「理解」してもらうために、通販広告で鉄板のように採用されている型があります。それが、『小公女型商品説明』です。
『小公女』とは、アメリカの小説家フランシス・ホジソン・バーネットによる世界的に有名な児童文学作品。皆さんもきっと、子供のころに絵本などで触れたことがあるかと思います。
1985年の日曜日の夜に放送された『世界名作劇場』でも、『小公女セーラ』は最高視聴率27.8%という驚異的な数字を叩き出し、ちょっとした話題になりましたし、毎週楽しみにされていたというアラフォー世代の方も多いのではないでしょうか。
とは言え、もう昔のこと過ぎて忘れてしまった、という方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にご説明しますと次のようなお話です。
《ロンドンの女学校で幸せな日々を送っていたある資産家の少女。ですがある日、不幸にして父親が病気で亡くなってしまいます。そのせいで少女はそれまでの生活のすべてを失い、屋根裏部屋で使用人として働かなければならなくなってしまいました。
そんな不幸な境遇でも優しさや誇りを失わずに生き続ける少女。
神様は彼女を見捨てませんでした。とある偶然から、彼女を探し続けていた父の親友と出会い、父が残した資産を譲り受けることになったのです。こうして彼女は屋根裏部屋を脱し、隣の家に引き取られ、再び幸せな暮らしを手にしました》
このストーリーは一言で言うと、「ネガティブな状況から入ってポジティブな状態で終わる」という構造になっています。そして『小公女型商品説明』とは、まさにその「ネガティブから入ってポジティブに転じる」という流れで構成された商品説明を意味します。
商品の特徴を説明する場合、この形を取るのが通販の鉄則とされているのです。
実際に手元にあるテレビショッピングの本編部分を見てみても、例えばダイエットのビフォー・アフター(使用前・使用後)型の体験記や、メイク商品で主婦がきれいな女性に生まれ変わる大変身もの、あるいは健康食品で生活上の悩みから解放されアクティブな今を手に入れたシニアのドキュメンタリーなど、その多くが、ネガティブな状況から始まり、その後、商品によってポジティブな状況を手に入れた人の姿を通して商品を紹介しています。
まさしく、『小公女型商品説明』です。これだけ多くの通販広告に採用されている理由は、やはりこのやり方が一番反応を得られるからに他なりません。
これは、『小公女型』の「ネガティブから入りポジティブに転じる」という構造が、問題の所在を明確にし、問題の解決策も明確にする、という2つの明確化を実現できるためだと考えられます。
逆に言うと、『非・小公女型』だと、問題点に対するネガティブな共感が薄いせいで、商品が何を解決してくれるのかが伝わりにくい。そのために、結果として商品の便益や価値が理解されにくいということなのです。
※
以上、『売れる広告 7つの法則 九州発、テレビ通販が生んだ「勝ちパターン」』をもとに再構成しました。効果的な広告を作る鉄板法則と購買心理モデルを、電通九州・香月勝行氏と心理学者の妹尾武治氏、分部利紘氏が解説します。
●『売れる広告 7つの法則』詳細はこちら