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『江戸前の旬』原作者が語る「獲りたてのマグロには味がない」

ライフ・マネー 投稿日:2020.01.13 16:00FLASH編集部

『江戸前の旬』原作者が語る「獲りたてのマグロには味がない」

 

 マンガ雑誌『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社)で、1999年から今も連載が続く、“老舗” の寿司漫画『江戸前の旬』。寿司の具である “タネ” のエピソードを中心に、すでに100巻が発売されている。原作者の九十九森先生が、「寿司ウンチク」を存分に語ってくれた。

 

 

「秋から冬にかけて、本マグロに脂がのってきてウマい時期です。マグロといえば、『昔はトロが捨てられていた』とよくいわれていますよね。

 

 

 でもじつは、大正時代に書かれた志賀直哉の『小僧の神様』のなかに登場します。脂が多いから、『アブ』と呼ばれていて。だから、みんながみんなではないですが、その頃から大トロは食べられていたんですよ。

 

 私が調べたところ、トロが捨てられていたのは、江戸時代の『塩マグロ』のこと。当時は日持ちをさせるために、マグロに塩をまぶしていたんですよ。そうすると、塩で脱水してしまうから、塩気が強すぎてそのまま食べられない。

 

 だからトロだけじゃなくて、マグロ自体、人気がなかったんですって。つまり、マグロを生で食べる文化がなかったんですね。江戸時代は、生の赤身といえばカツオだけでした」

 

 現代では、マグロはどう食べるのが一番ウマいのだろうか。

 

「小樽の寿司屋街とは違う別の通りに、しぶい雰囲気の “スナック街” がありまして。18~19年前に行ったとき市場で聞いたら、『飲み屋街にある寿司屋がウマいよ』というので、行きました。そしたら、カウンターのネタケースに、真っ黒なマグロがあって……。

 

 最初、『えっ?』と思いながら、知り合いと2人でおそるおそる1人前頼んでみたら、その黒いマグロが出てきました。それが……めちゃめちゃウマかったんですよ(笑)。そこで初めて、熟成マグロを知りました。

 

 その頃、“マグロを寝かす“ ということ自体を知りませんでしたから、『こんなに色が悪いマグロが、なんでウマいんだろう?』と思って。そのあと、寿司屋街で2軒ほどお店をまわりましたが、その真っ黒いやつほど美味しいマグロはありませんでした」

 

 熟成の効果を実感するために、いい方法があるという。

 

「九州の回転寿司に行ってマグロを頼んでみると、熟成のよさが一発でわかります。朝買いつけたマグロをそのまま出すので、新鮮すぎてツルツルで、まるで味がありません。私は、まったく美味しいと思わない。

 

 ふつうの回転寿司は、ある程度マグロを冷凍状態で寝かせているので、美味しく食べられます。逆にイベント営業で、獲れたばかりのマグロをその場でさばいて提供するお店には、味を求めて行くべきではないですね。

 

 たとえば、1月5日の初競りものなら、前年内に獲れたものかどうかが、味の良し悪しの分かれ目。最低でも1~2週間は寝かせたいところです」


つくもしん
青森県出身 漫画原作者 作画担当のさとう輝先生とコンビで週刊漫画ゴラクで連載中『銀座「柳寿司」三代目 江戸前の旬』、スピンオフ作品の『寿司魂』『旬と大吾』『ウオバカ!!!』などを執筆。メディアへの出演は、連載20年で「ほとんどない」そう

 

(C)九十九森/さとう輝・日本文芸社

 

※『江戸前の旬DELUX』1巻が、日本文芸社より2020年1月29日に発売

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