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創造的な発想を生み出すために必要な「4段階のプロセス」

ライフ・マネー 投稿日:2020.04.06 16:00FLASH編集部

創造的な発想を生み出すために必要な「4段階のプロセス」

 

「創造的発想はどこからやってくるのか」という問いは、長い歴史を通して人類の最大の問題といえるかもしれません。創造的発想が生まれる過程に関する研究は長きにわたって行われており、その研究は心理学や脳科学だけにとどまらず、経済学や教育学など様々な視点から仮説が唱えられています。

 

 

 ノースカロライナ大学のキース・サウヤー教授は、このような50年以上にもわたる創造性に関する研究をまとめた著書『Explaining Creativity』の中で、創造的な発想を生み出すためには、ある共通的なプロセスが必要であると報告しています。

 

 このプロセスをよく表しているモデルとして、社会心理学者グラハム・ワラスによる「創造性が生まれる4段階」が特に用いられています。

 

■グラハム・ワラスによる、創造性が生まれる4段階

 

(1)準備期:問題設定とその解決策の立案
(2)あたため(孵化)期:問題から一度離れる(しかし、潜在的な試み)
(3)ひらめき期:新たな発想・解決策が突然降ってくる(アハ体験)
(4)検証期:明確な思想の完成

 

【第1段階】

 

 まず、第1段階の「準備期」では創造性を生み出すための下準備をします。最終的に何を解決したいか、先にあるゴールや意欲がなく何も思考せずにただぼやっとしているだけでは創造的な解決法も生まれません。つまり最初に、達成するべき目標や解決すべき問題を設定する必要があります。

 

 また、ここでは必要な情報や知識を集め、論理的思考に基づいて問題解決に熱中する期間も含まれます。この第1段階で主役を担っているのは「論理的思考」であり、様々な知識を駆使して、論理的に解決しようと努力をします。

 

【第2段階】

 

 第1段階では満足のいく解決策が見つからないことが多く、時には半分諦めかけたような状態で問題から意識的に離れます。この期間を第2段階の「あたため期」と呼びます。「煮詰まったから一旦リフレッシュしよう」というような感覚です。つまり、ここでは一度問題から離れて休息したり無関係なことをしたりしています。

 

 しかしこの期間では、ただ単に「もう無理だからやめた!」といって別のことをするわけではありません。本人は、意識的に問題から離れているので問題に対して何も思考をしていないつもりでも、脳内では潜在的に思考が熟しつつあり、何らかの解決策が自然に出てくるのを無意識的に待っている期間になります。

 

 それゆえこの期間は「孵化期」とも呼ばれています。

 

【第3段階】

 

 第3段階の「ひらめき期」にて、いよいよ創造的発想が生まれます。ここでは、前段階の「あたため期」で問題から離れ、意識上では解決に向けて何も取り組んでいなかったので、突然、創造的な解決策が降ってきたような感覚に陥ります。

 

 また、どのように解決策が導かれたのか本人にもわからないので「天の啓示」などと呼ばれることもあります。

 

 このような例は過去に大発見をした研究者の話でもよく耳にします。例えば、ポアンカレ予想で有名な数学者アンリ・ポアンカレは、ブックス関数発見の経緯について、一度煮詰まった問題から離れて散歩に出かけるため、乗合馬車の踏板に足をかけた瞬間に天の啓示がひらめき問題が解けたといいます。

 

 ここでは、探し求めて見つからなかった解決策が突然意識に上がってくるため強い喜びと確信を伴い、「アハ体験」ともいわれています。

 

【第4段階】

 

 最後の第4段階である「検証期」では、ひらめいた解決策が実際に正しいかどうかを確認する作業が行われます。これにより、「ひらめき期」では曖昧だった案がより明確になり、直感が確信に変わるのです。「検証期」で行う作業の多くは論理的思考に基づきます。

 

 ここで、より正確な検証を行うためには、第1段階の「準備期」で問題解決に向けて様々な思考を巡らせていた方が良いと思われます。

 

 つまり、「準備期」では満足のいく解決策が見つからなくて諦めかけ、時間の無駄だったと思われていた作業が「検証期」を通して一つに繋がるのです。よく「無駄なことなんてない」なんていいますが、これはまさにこのことを指しているでしょう。

 

 この4段階のモデルは、創造性の創出プロセスを大雑把に表現したもので、常にこのモデル通りに創造性が生まれるわけではなく、行ったり来たりするのが一般的です。筆者の主観としても、このモデルは創造的発想のプロセスを上手く説明していると感じます。

 

 というのも、筆者自身も、このプロセスを知るずっと前から、なんとなく特定のプロセスを踏むことで問題解決に近づくと感じ実行していました。

 

 ただし「あたため期」に問題を忘れて全く関係ないことをしているのではなく、解決すべき問題を頭の中で維持しながら、別のことをすることで解決策をひらめくケースが多いと感じます。

 

 例えば、散歩しながら考える、仮眠をとるなどです。仮眠は問題を忘れていると思うかもしれませんが、筆者が何か問題解決をしたい時にとる仮眠は、戦略的な仮眠になります。

 

 まず、紙とペンを用意し、問題を紙に書きます。そして3~4時間その問題を考えた後、1時間の仮眠をとります。そして起きた瞬間にすぐさままた問題に取り組みます。これを繰り返していくことで、徐々に最高の答えにたどり着くというわけです。

 

 

 以上、大黒達也氏の新刊『芸術的創造は脳のどこから産まれるか? 』(光文社新書)をもとに再構成しました。「脳の潜在記憶」の観点から、創造性がどのように生まれてくるのか、脳科学や計算論、人工知能に関する論文を通して探求した本です。

 

●『芸術的創造は脳のどこから産まれるか? 』詳細はこちら

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