それにしてもなぜ、金髪女優たちは来日するのか。出演コーディネートの裏事情をよく知る業界関係者に聞いた。
「金髪ものの1作あたりの売り上げ見込みは、およそ500本といわれています。日本のトップ女優に比べて、本数としては少ないですが、確実に売れてメーカーは損をしないので、定期的にリリースします。
じつは彼女たちには、『日本に来たい理由』があるようです。欧米では、女優さんが舞台に立つポルノショーの人気があり、それなりに彼女たちの需要はありますが、昨今のコロナ禍で、舞台そのものが中止になっていて稼げない。
『それなら映像のジャンルで仕事をすればいいじゃないか』となりますが、欧米では映像、日本のAVにあたるものの需要は、それほどないそうです。聞いたところでは日本の3分の1の市場規模だそうです。
だから女優さんはAVが市民権を得ていて、プロダクションや制作会社がしっかりしている日本を目指すのです」
そして、「撮影現場ではトイレ以外、スタッフが面倒を見てくれる」という待遇のよさも、金髪女優の自尊心をくすぐるのだとか。レイニー・グレイは「ニホンのAVに出てみたい」と、みずから志願したほど。ちなみに、ギャラはどのくらいなのだろうか。
「日本人のトップ女優が1本約150万円。金髪女優は50万円程度だと思います。しかし、一日に2本撮り、3本撮りもあります」(AVプロダクション関係者)
なかなか厳しい条件ではあるが、彼女たちにとっては、自国よりも日本のAV市場のほうが需要は大きく、魅力的なのだろう。
一方、欧州で現地美女を撮影した経験があるAV監督のバクシーシ山下さんは、金髪女優人気をこう語る。
「とくに日本の若者にとって、海外の制作会社が撮影した金髪女優の作品は、『撮影のレベルが高い』そうなんです。
日本は予算の関係でスタジオは狭く、撮影も1日で終わらせることが多いのですが、海外では広いハウススタジオなどで撮影するため(映像に)遠近感があります。これが、『映画に近い』と評価されています。しかも、ネットで簡単にアクセスできます。
そうして洋もの好きになった彼らが、日本でリリースされる金髪女優ものにも、興味を示しているようです」
裾野は確実に広がっている。裏を返せば、日本のメーカーが若者をつなぎ留めるには、海外の女優を起用して内容を日本向けにするなど、「作り込んだ作品」を送り出さねばならないということだ。
ばくしーしやました
1967年生まれ 1990年に監督デビュー。セックスを通して人間の等身大の姿を描く作品は、幅広い支持を受ける
(週刊FLASH 2020年9月29日・10月6日号)