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吉田戦車「背の高すぎる本棚」倒壊防止のためチェーン購入

連載 投稿日:2017.06.21 11:00FLASH編集部

吉田戦車「背の高すぎる本棚」倒壊防止のためチェーン購入

 

 背の高い本棚を買ったのだが、仕事部屋が和室のため、耐震金具、天井つっぱり棒などがまったく使えないことに気づいた私。

 

 本棚の背後は、土壁、長押、部屋の出入り口のふすま。
 これはもう、木製の部分である長押を使うしかない。

 

 昔の和室につきものの長押は便利なもので、そのままハンガーをかけたり「なげしフック」のような製品で帽子をかけたりできる。

 

 そこになにか金具をネジこみ、本棚に固定すれば、かなりガッチリした耐震化が可能ではないか。

 

 さっそくホームセンターの金具売り場を物色してみた。
 だが、DIYの心得もほとんどなく、どれがどう使えるのか、まるで見えてこない。

 

 ふと、むかし伊豆に釣りに行ったときの晩、入った飲み屋のことを思いだした。

 

 カウンター内の、店員の背後の酒の棚。あそこに、酒びん落下防止用に、しっかりとチェーンが張られていたのだった。群発地震が多かったころだ。

 

「上のほうの高い酒の棚には張ってないでしょ。割れたらまたボトル入れてもらえるからさー」

 

 ぎゃはははは、と、ママが冗談をいったことを思いだす。
 あれだ!

 

 本棚の両側の長押に金属フックをねじこみ、鎖でぐるっと巻く。本は飛び出るかもしれないが、本棚そのものの倒壊は防げるはずだ。

 

 そうそう、娘がママゴトの時に「麺」として使っていた、黄色いプラスチックチェーンがうちにある。あれは少々短いが、あの手のものは百均にありそう!

 

 あった。あったが、真っ赤。それなりにおちついた和室である仕事部屋に、真っ赤な鎖がぶらさがっているのはとてもイヤだ。

 

 別のホームセンターに自転車を飛ばす。
 あった。白いプラスチックチェーンが! 黄色いのと金属製もあったが、おとなしく白を買うことにした。

 

 1メートル278円。高いんだか安いんだかぜんぜんわからない。メートル単位で、ということなので、140センチもあればじゅうぶんなのだが、2メートル買った。店員がはかって切ってくれる。肉屋さんみたいだ。

 

 フックは5個入って100円。小学校で雑巾などつるしていた、よく見る「?」のような形のフックなのだが、商品名は「真鍮メッキ洋灯吊」というのだった。洋灯ってのが、歴史ある金具という感じでいいですな。

 

 帰宅し、それらを設置し、床に積んでいた本をつめこんだ。かなり入ってまだ余裕があり、収納力にはとても満足した。

 

 さすがだ、背の高い本棚!

 

 ただ、地震対策はしたものの、上のほうまでぎっしり本を入れるのはためらわれ、上部はそれまで押し入れに収納していたDVD・ブルーレイ置き場にした。

 

 特撮とアニメが多いなとか、買ったはいいけど途中までしか見ていないブルーレイBOXが2、3あるな……、というようなことが可視化された。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 1989年に連載開始の『伝染るんです。』が国民的大ヒット。『火星田マチ子』『ぷりぷり県』など著作多数。2015年、第19回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。近刊に『おかゆネコ7』『まんが親5』(ともに小学館)、絵本『走れ!みかんのかわ』(河出書房新社)。妻のマンガ家・伊藤理佐さんと小学2年生の娘を育て中

 

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載しています

 

(週刊FLASH 2017年6月27日号)

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