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吉田戦車「20年ぶり」少年漫画誌を買ってショックを受けたこと

連載 投稿日:2017.07.19 20:00FLASH編集部

吉田戦車「20年ぶり」少年漫画誌を買ってショックを受けたこと

 

 昨年(2016年)から、「週刊少年サンデー」を買いはじめた。税込み280円。毎週コンビニか書店で買う。

 

 もちろん、マンガ大好きな子供だった自分が初めて買う商品ではない。すっかりごぶさたしていた「紙のマンガ雑誌を毎週買う」ということをあえてして、むかしのピチピチした気持ちを思い出してみたいと思ったのだ。

 

 仕事のご縁がある青年誌は送っていただいている。少年サンデーもかつて一度だけ連載したことがあり、数年間送ってもらっていたのだが、さすがに献本リストからはずれたようだ。

 

 あ、「また送ってください」といっているわけでは断じてない。むしろ送ってこられたら、買えなくなるから困る。ただ読みたいのではなく「買って読みたい」のだから。

 

 最後に毎週買っていた雑誌は「少年ジャンプ」で、たしか『SLAM DUNK』が終了したあたりで買うのをやめ、好きなマンガは単行本で追うことにしたのだった。もう20年も前になるのか。


 小学4年生ぐらいから、週刊少年マンガ誌に夢中になった。マガジン、サンデー、ジャンプ、チャンピオン、キング、すべての雑誌に、愛読していた時期がある。

 

 もちろん同時に買えるわけはなく、友達と貸し借りしたり、申しわけないが立ち読みをして、好きな作品の単行本化を待ったりしていたのだ。

 

 たとえば週刊少年サンデーでいえば、高橋留美子先生。『うる星やつら』開始時、私は中3。主人公のラムちゃんや諸星あたると同世代であり、あのマンガは現実逃避に明け暮れる私の、まさにバイブルであった。

 

 その高橋先生がバリバリ連載中であることが、今回、少年誌の中でサンデーを選んだ理由のひとつでもある。送っていただく青年マンガ誌は、山のように積みあげてから、妻のうんざりした気配に気づいてあわてて読んだりしているが、さすがにお金を出して買ったサンデーはすぐに読む。


 もう子供のころのようにすべてのページを読みつくすことはできないが、この久しぶりの「サンデー買い」をしなかったら出会えなかっただろう、好きなタイプのマンガも少なくなく、得をした気持ちである。

 

 紙質はむかしのままの再生紙100%。検索してみたら「印刷せんか紙」という紙らしく、インクの乗りも、数十年前より多少進歩しているとはいえ、クッキリというわけにはいかない。低価格を維持するための印刷品質であり、老化しはじめている目には少々見づらくなってきているが(それに気づいたときは軽くショックを受けました)、これだよこれ、とも思う。

 

 雑誌の「雑多な世界」からしか得られないものは確実にある。少年時代の私がそこから多くのものをもらったように、中年時代の私にも、また何かくれませんか、と思うのだ。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 1989年に連載開始の『伝染るんです。』が国民的大ヒット。『火星田マチ子』『ぷりぷり県』など著作多数。2015年、第19回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。近刊に『おかゆネコ7』『まんが親5』(ともに小学館)、絵本『走れ!みかんのかわ』(河出書房新社)。妻のマンガ家・伊藤理佐さんと小学2年生の娘を育て中

 

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年7月25日号)

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