連載
吉田戦車「測り続けられない血圧計」挫折の理由は
連載FLASH編集部
記事投稿日:2017.07.26 11:00 最終更新日:2017.07.26 11:00
50歳をこえて、高血圧といわれる領域に入った。
酒飲みの麺好きだからしかたないとは思うものの、このままほうっておいて薬にたよらなければならなくなる事態はさけたい。
というわけで、2014年夏に血圧計を買った。上腕で測る一般的なタイプのもので、3779円。
しばらくは毎日朝晩測り、スマホの血圧アプリに記入した。グラフが右肩下がりになれば、運動や減塩のはげみになるだろう。
歩く時間を意識してふやした。軽いジョギングをこころみたこともあるが、一週間で挫折。とりあえず散歩は好きなので、歩きつづけるしかない。
血圧本を何冊か読み、減塩も心がけるようになった。たとえば寿司は、醬油につける食べ方をやめた。小皿に少量入れた醬油を箸でつっつき、それを寿司の上にチョンとつけて食べる。コハダなど酢じめのネタは醬油完全カット。はじめは「醬油好きのこのオレが……」と情けない気持ちになったが、やがて慣れた。
そんな努力をはじめたのに、グラフが右肩下がりになっていく気配はなかった。なんかギザギザ。1、2カ月程度じゃ結果が出なくて当然なのだが、血圧を測りつづけるモチベーションは下がる。挫折した。
その後は数カ月おきに思い出したように測って「……改善してねえ」「むしろ上がってないか?」と、ため息つきながら引出しにしまいこむ、という感じになった。
年に一度の健康診断の数値を目にすると、さすがにやる気が再燃する。寿司の「減塩食べ」は習慣化したが、ふと気づくと平気で連日ラーメンを食べたりしていて、 これじゃいかん、と思った。
ふたたび毎日測りはじめた。
「旅行や帰省の時にもきちんと測らなければ!」と思いこんで、2015年の暮れに、持ち運びやすい手首式血圧計を購入。送料込みで2865円。
これが失敗した。上腕式より、数値が高めに出るのである。
どちらかといえば上腕式のほうが正確、といわれているので、手首式のやつに「ふっかけられてる」ような気持ちになる。
上腕式が、私の気持ちを忖度し、サービスとして数値を低めにしている可能性もなくはないが(ないです)、どちらが正しいか判明しないまま、手首式は押入れの「失敗したもの墓場」にしまわれることになった。ごめんな。
最近半年ぶりに、もちろん上腕式で測ってみた。まったく改善していない。もう一生、常に血圧を気にして暮らさなければならないんだな、とため息をつき、また定期的に測りはじめた。
…………のだが…………
毎日だとつづかないので、週3、4回でいいことにしたりと、敷居を低くしてやってなお、一カ月ぐらいで飽きて挫折。
夏休みの宿題「毎日の気温調べ」がぜんぜんできなかったのと同じような、性格的なアレだろうか、と思ったりする。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめ し』を連載中。新連載『出かけ親』が「ビッグコミックオリジナル」15号(7月20日発売)よりスタート。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2017年8月1日号)