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吉田戦車に「フライパンは鉄」と決意させたトホホ料理

連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.05.23 08:00 最終更新日:2018.05.23 08:12

吉田戦車に「フライパンは鉄」と決意させたトホホ料理

 

 料理好き=調理器具好き、と考えてさしつかえないと思うのだが、私もその一人だ。そして調理器具好きの人生は、たいていの場合、買いもの失敗成功のくりかえしなのではないだろうか。

 

 店舗やネットで目にするフライパンの豊富な種類を見るにつけ、世界中の人々の「フライパン試行錯誤」を思う。

 

 今、わが家の台所にはフライパンが5個あり、それぞれ稼働している。フッ素樹脂加工のものが3つ。まずサイズ26センチ。

 

 妻の伊藤がどこかのスーパーで買って使ってきたもので、すでに樹脂部分は丸ハゲになっているが、まだ現役だ。

 

 油を敷いて使い続けることもできなくはないが、オーブンシートや魚焼き用ホイルを敷いて塩鮭などを焼く、焼き魚専用鍋になっているのだった。

 

 近ごろは40を超えてまだ現役の、プロスポーツ選手のような風格が出てきた。

 

 14センチと20センチは、私がかつて仕事場で使っていた。もはやメーカーも不明。表面加工部分が優秀で、どちらもまだ現役だが、そろそろ先が見えてきた感はある。14センチの使い勝手はとてもいい。一個分の目玉焼きとか、タレやソース作り用など、出番は多い。

 

 そして、鉄のフライパン2つ。どちらもメーカーは「リバーライト」だ。24センチの炒め鍋は、ふちがやや深めに立ち上がっていて、中華鍋的に使えるフライパンである。これもかつて一人用に買ったものなので、家族3人分の野菜炒めや焼きそばだと、もう二回りくらい大きさがほしい感じだ。

 

 一番の新参者が、26センチのもの。生姜焼き3枚とか、ハンバーグ3個とか、家族の人数を考えて買ったサイズである。使いはじめは意外にくっつき、失敗したかなと思ったが、だんだん鍋肌に油がなじんで、いい感じになってきた。

 

 これの前は、同サイズの「セラミック加工フライパン」というのを妻にプレゼントし、使ってもらっていた。

 

 だが、かなり繊細な火加減、取り扱いを要するこのフライパンを、どちらかといえば豪快な調理をする妻は、使いこなせなかった。

 

 娘5歳の誕生日に妻がそれで焼いた「1個も無事に焼けた個体がない餃子」のビジュアルは衝撃的だった。皮がすべてフライパンに引っついて「餃子の具と餃子の皮の炒め焼き」みたいなものになっていたのだ。

 

 完全にユーザーが悪いのだが、かなり火加減などに繊細な私が使っても、そのフライパンは、使い勝手がいいとはいいがたい道具だった。

 

 買いもの失敗を認めて思い切って処分し、鋼鉄製のものに買い替えたのである。

 

 鉄はいい。

 

 フッ素樹脂加工にもお世話になってきたが、今後連れ添うのはやっぱり鉄のフライパンかな、と思っている。

 

よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん

 

※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載

 

(週刊FLASH 2018年5月29日号)

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