連載
吉田戦車「自己流手作りカレー」にハマりすぎてスパイスの嵐
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.07.11 07:00 最終更新日:2018.07.11 07:32
あいかわらず朝晩の飯当番をやっているが、夏が近づき、カレーの出番が多くなってきた。
市販のカレールウは便利でおいしいが、以前買ったりいただいたりした「辛くない(辛さひかえめの)カレー粉」がまだたくさんある。使い切りたい。
今までの自己流手作りカレーは、まずくはないけど、だいたいいつもボンヤリした味だったので、何冊か本格カレーの参考書を買って読んでみた。
レシピの分量どおりに作ったりはしないが、なんとなく「ここははずさない」という勘どころを学んでいるつもり。インドの家庭では、みそ汁や野菜炒め感覚で、毎日ささっと料理を作っているのだと思う。そういうところをマネしたいと思う。
基本は、「タマネギ、ニンニク、ショウガ料理」なのだ、と定義することにした。
ニンニクのみじん切りを弱火で油炒めし、タマネギを加えて炒め、おろしショウガを入れてさらに炒め、そこにカレー粉を入れる、という手順が、すべてのカレーのベース。
トマト(生、ペースト、ケチャップなど)は必ず入れるし、無糖ヨーグルトもあれば入れる。水に浸けておかなくても煮えるレンズ豆やムング豆を入れたりもする。
何食か作るうちに、けっこうおいしくなってきた(と思う)。カレー粉を消費しなくちゃならないのに、ホールのスパイスも買ってしまった。クミンシードは家にあったが、コリアンダーシード、マスタードシード、フェヌグリーク(メティシード)などなど。使いこなせるのかオレ。
そして気になって気になって、どうしても欲しくなってしまったのが、酸味づけに使うという「タマリンド」のペーストだった。名前だけは聞いたことがある。そのエキゾチックだろうと思われる酸味をぜひ味わってみたい。
近所では買えないのでネットで購入。200グラム容器に入っていて600円ぐらい。インドやタイだと10分の1ぐらいの値段で買えるのかもしれないなあ。
開封して味見してみる。黒褐色の、トロリとした液体。
すっぱい。……あれ? このすっぱさ&この見た目のものって、うちにあった気がするぞ。それは故郷、岩手県奥州市江刺産の「純粋梅肉エキス」だった。
両親に勧められた「なめ薬」のような、強烈にすっぱいもので、タマリンドはそれより酸味はおだやかだが、よく似ている。
ネットで調べたら「ない場合は甘くないねり梅で代用」などという記述も。幸せの青い鳥を求めてインドまで行ったら、実は故郷にいた!
そして、どちらにしろ、子供があまり好きな酸味じゃないことははっきりしていた。ごく少量ずつ使うか……。でも梅肉エキスも余ってるんだよな……。
日々おいしくなってる(と思う)手作りカレー。妻は誉めてくれるが、無言で食べる子供からは「どうして普通の箱のカレールウで作らないんだろう……」という心の声が聞こえるようだ。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年7月17日号)