連載
吉田戦車トップチューブバッグ買うも「ないわー」と思う
連載FLASH編集部
記事投稿日:2018.07.25 06:00 最終更新日:2018.07.25 06:00
クロスバイクを買って1年が過ぎ、今また自転車シーズン真っ盛りである。
先日は笹目橋を渡って埼玉県に入り、戸田競艇場あたりから荒川沿いを走り、都内に戻って赤羽に立ち寄り、環八を通って帰るという、なかなかハードなサイクリングをした。
赤羽で立ち飲み屋に入るわけにもいかず、さびしかったが。
スマートフォンに入れた、走ったルートや時間を記録できるアプリは数回で使わなくなった。自分が記録などぜんぜん見返さない人間であることを知った。
スマホそのものは、地図を頻繁に見るので、忘れたら困る必需品である。スマホをいじりながら自転車をこぐような危険なまねはもちろんしないし、そもそも前傾姿勢では怖くてできない。
スマホは、リュックの外側のポケットや両脇のボトル入れにつっこんでいるのだが、いちいちリュックを前に回してスマホを取り出すのは、ややわずらわしい。
ベルトにつける1000円ぐらいのスマホケースを買ったが、微妙にこいでる時にじゃまで、すぐに使わなくなった。
開閉できる胸ポケットがあれば、その位置が一番便利なのだが、そんなものがついたシャツを着て走るということがまずない。
上着のいる季節は胸のポケットでいいけど、乗車が増えるのは圧倒的に上着がいらない季節である。ハンドルにスマホホルダーという器具で固定している人もよく見かけ、これはありかもしれないな、と思った。
いろいろ調べるうちに、スマホを上面に入れて、ビニール越しに操作可能、下には小物を入れられる、トップチューブバッグというものが目に入った。
フレームバッグ、サドルバッグ、フロントバッグなど、この手の車体にとりつけるバッグは、新車にうかれていた時期に、検討に検討を重ねたものだ。
結果、購入は見送り、背中に通気性のあるリュックにおちついたのだった。それをすっかり忘れていたようで、深く考えずに、そのトップチューブバッグをポチってしまった。1600円ぐらい。
自転車に装着してみて、なぜ昨年この手の商品を買わなかったのか、思い出した。
じゃまなんじゃないか、と想像したとおりだった。停車してサドルから尻をはずしてトップチューブにまたがった時に、股間にあたるというほどではないが、じゃまである。
そして、自転車を停め、コンビニ、スーパー、飯屋などに寄るたびに、その中からスマホをとりださなければいけないのがめんどくさい。
カバンがわりに使う場合は、自転車を離れるときにベルクロストラップ3カ所をいちいちはずして、財布やティッシュなど小物を入れたそれを持ち歩かなければいけないわけだ。
ないわー、と思う。
Tシャツの胸部に、ストレスなく魔法のようにスマホを装着できるケースの登場を夢見つつ、試行錯誤はつづく。
よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身 『伝染るんです。』『ぷりぷり県』『まんが親』『おかゆネコ』など著作多数。「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん
※本誌連載では、毎週Smart FLASH未公開のイラストも掲載
(週刊FLASH 2018年7月24・31日合併号)