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女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」やっぱりナポリタンが好き!
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2021.04.09 16:40 最終更新日:2021.04.09 16:44
コロナ禍は、私たちの生活のさまざまなところに影響を及ぼしています。
この1年、特に食生活が変わったという人は多いでしょう。たとえば、2020年、マカロニ・スパゲティの輸入量は、前年比23.8%増の18万1000トンでした。メーカー団体で作る一般社団法人日本パスタ協会に伺ったところ、巣ごもり需要で、スーパーマーケットの棚から商品が消えるほど、パスタはよく売れたそうです。
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そんなことも関係があるのかないのか、昭和レトロブームなのか、最近スパゲティ・ナポリタンが注目されています。ネットでも高い評価を得ている東京千代田区の「さぼうる2」などは、11時の開店を待って常に行列ができています。
スーパーには、ボンゴレやカルボナーラなどのパスタソースと並んで、ナポリタンの具入りソースも販売されていますが、ナポリタンは、実はイタリアにはありません。
子供の頃、スパゲティはナポリタンかミートソースだった世代としては、そんなバカな!?と信じられない気持ちですが、ナポリタンの誕生秘話を、『あのメニューが生まれた店』(平凡社)の著者である菊地武顯さんが詳しく教えてくれました。
第2次世界大戦後、進駐軍は兵営食を大量に持ち込みました。当時、GHQに接収されていた横浜のホテルニューグランドの入江茂忠総料理長は、彼らが茹でたスパゲティをトマトケチャップと和えて食べているのを見て、試行錯誤の末にトマトソースを作り、ハム、マッシュルームと和えました。そして、ナポリの屋台料理に似ていたので、「ナポリタン」と命名したそうです。
私も実際にホテルに出かけてみましたが、今でも同ホテルでは、有名なプリンアラモードとともに、ナポリタンは自慢のメニューです。ホテルの紋章付きの皿に盛りつけられたナポリタンは懐かしく、でも上品な味。
「日本人の食感に合うように、パスタにもちもち感を持たせています。トマトソースも昔から同じ味です。お口に合いますか?」と、ウェイターさんがナポリタンの歴史を語りながらサービスしてくれました。
いまや「アルデンテ」と呼ばれるパスタにほんの少し芯が残る状態で食べるのは当たり前になっていると思いますが、昔よく食べたナポリタンの麺には芯がなく、その食感がとても大切。ニューグランドのナポリタンの麺の直径は1.7ミリ。7割方茹でたパスタを冷まし、5、6時間置いて、注文が入ったらさっと湯通しすると、あのもちもちした食感になるそうで、麺は炒めないそうです。
一方、ケチャップを使い、麺を炒めるタイプの元祖と言われるのは横浜市野毛のアメリカ風洋食レストラン「センターグリル」です。1946年の開業以来、その作り方は、2.2mmの極太麺をゆでて一晩寝かせてもっちり感を出し、ケチャップを入れてからしっかりと炒めて酸味を飛ばし、甘みを引き出します。
菊地さんが仰るには、多くの喫茶店がこの炒める方式を採用しました。
「大量に茹で置きし、注文が入ったら素早く出せるのがよかったのでしょう。かつて、たらこスパゲッティの発祥店『壁の穴』を取材したときのこと。壁の穴ではパスタを注文後に茹でましたが、昭和30年代の当初は『待ち時間が長い』とクレームが多かったそうです。このエピソードひとつとっても、日本のナポリタンはイタリアのスパゲティとは異なるものなのです」
皆さんは、無性にナポリタンを食べたくなることがありませんか?
東京・港区によく行くアットホームなイタリアンの店があります。トラットリア セレーナ。イタリアのトスカーナ州で修行し、料理本も出しているオーナーシェフ志村さんの作る料理は、素材にこだわった本格的なイタリアンです。マダムは大学で教鞭もとっており、ワインにも造詣の深い方。当然、メニューにナポリタンはないのですが、先日遠慮しながら頼んでみました。
すると、「ときどきナポリタンを食べたいという方がいらっしゃいますので、お作りします。玉ねぎとピーマンとハムで。ただしケチャップだけでなくトマトソースを入れますよ」と優しい笑顔を浮かべながら、マダムが快諾。そして、歴史も教えてくれました。
「コロンブスの時代には観賞用だったトマトが、ナポリに行ってから食用になったそうです。アメリカに労働者として渡ったイタリア人にナポリ出身者が多かったので、彼らと一緒にトマトもスパゲッティもアメリカに渡ったのですね。ピーマンも南イタリアで使う野菜です」
なるほど。知れば知るほどナポリタンをめぐる世界は興味深いです。
東京・有楽町の高架下にある商業施設インズ3の1階、カウンターのみの店「ジャポネ」に行ってみました。1人客が多いせいか、注文と支払いの会話以外はみな無言で、麺を炒める音に耳を澄ましながら目の前のナポリタンと向き合う神聖な時間のようにも感じられました。もちもちの食感に少し甘めのソースがからまった小松菜にシイタケ。麦茶がサービスされ、もうナポリタンは完全に日本の料理だと納得。
懐かしい食感に心が休まります。ナポリタンめぐりは終わりそうもありません。
●横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)