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『さかなのこ』でほのぼのした「さかなクン」の世界へ…注目はお母さん役の井川遥/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.10 11:00 最終更新日:2022.09.10 11:00
お魚をこよなく愛し、その生態や料理法について豊富な知識をもち、タレント、画家、大学教授として大活躍の「さかなクン」が書いた初の自叙伝『さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生!』を映画化。
「さかなクンの映画であって、さかなクンの映画でない」と監督が語るように、さかなクンの半生を描きつつ、ファンタジーな作品に仕上がっています。
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簡単にストーリーをご紹介しましょう。
寝ても覚めてもお魚のことばかり、お魚愛にまっすぐ一直線の小学生時代のミー坊から、その半生がつづられます。
ミー坊は、つねに魚介図鑑を持ち歩き、授業中も休み時間もお魚の絵ばかり描いていて、お魚を食べるのも大好き。他の子供と少し違うことを心配する父親、信じて応援し続けて背中を押してくれる母親、そして、ミー坊の希望で、タコ料理が1カ月続いても文句も言わずに付き合ってくれる兄のいる家庭で、のびのびと育ちます。
高校生になっても、相変わらずお魚に夢中で、勉強はそっちのけ。しかし、いつの間にか誰とでも仲よくなり、周りを笑顔にする不思議な魅力があるミー坊。夢はもちろん「お魚博士」です。
高校卒業後、夢の実現を目指して、さまざまなお魚の仕事につきますが、なかなかうまくいかずに悩んだことも。それでも、たくさんの出会いと優しさに導かれ、やがて独自の道に進んでいきます。
高校生からのミー坊は、『あまちゃん』ののん、小学生時代は西村瑞季と、ともに女子が演じています。監督によれば、今回のミー坊のテーマは「男か女かは、どっちでもいい」だったそう。男女というより、どういう役者なら、さかなクンを演じられるかを考えて、のんにやってほしいと考えたそうです。
やわらかくて、ユーモラスで、嫌みなく一生懸命なキャラクターということでしょうか。
のんは、テレビで見るさかなクンの表情や動きそのもので、中性的というより、性別を超えたさかなクンワールドを自然体で表現していました。
ところで、この作品で、さかなクンは、原作、俳優、魚類監修、高校時代の吹奏楽部時代から吹いていたというバスクラリネットの演奏、題字の執筆、ミー坊が着る白衣の絵の描きおろしなど、マルチな才能をいかんなく発揮しています。
高校3年生のときにテレビ東京系のバラエティ番組『TVチャンピオン』の「第3回全国魚通選手権」で準優勝して一躍注目を浴びたことは知っていましたが、中学3年生のときに、学校で飼育していたカブトガニの人工孵化に成功して新聞に取り上げられたこともあるそう。その知識は子供の頃から群を抜いていたのですね。
お魚の絵の上手さ、人をハッピーにさせる明るくユニークなキャラクター、なにより魚の生態だけに興味があるのではなく、魚を食べることに熱心なところも尊敬できます。
それにしても、さかなクンのお母さんは立派です。
母役の井川遥さんがいい味を出していましたが、しっとりとした声でミー坊に、「広い海に出てごらんなさい」と語りかける場面がありました。周囲から浮いてしまいがちなわが子の背中をしっかり押してあげたのです。
「広い海」と言えば、ちょっと映画から離れますが、2006年に朝日新聞に掲載されたさかなクンの記事を読んで、とても印象深かったことを思い出しました。
魚の世界にもいじめがあるそうです。たとえば、メジナは海の中で仲よく群れて泳いでいるけれど、狭い水槽に入れると、1匹を仲間はずれにして攻撃を始める。その魚を別の水槽に入れると、残ったメジナは別の1匹をいじめ始めて、助け出しても、また次のいじめられっ子が出てくる。
ならばと、いじめっ子を水槽から出すと、新たないじめっ子があらわれる。小さな世界に閉じこめると、同じ種類なのに、なぜかいじめが始まるそうです。
そこで、さかなクンは言います。小さなカゴの中で誰かをいじめたり、悩んだりするのではなく、広い空の下、広い海へ出てみよう、と。いじめられっこを励ますには最高の言葉です。この言葉に説得力があるのは「好き」を追い続けるさかなクンだからでしょう。
映画には母が息子を信頼するシーンがいくつも出てきますが、「広い海」へと背中を押してくれるシーンが、私にはいちばんジーンときました。本当に素敵なお母さんです。
映画館の地下に書店がありました。映画を見終わったあと、思わず原作『さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生!』を手に取りました。原作を読めば、またほのぼのとしたさかなクンの世界に入れそうです。
横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)
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