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誕生50周年『ベルばら』がやっぱり「永遠」の理由/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」
芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.17 17:25 最終更新日:2022.09.17 17:28
9月17日、「誕生50周年記念ベルサイユのばら展ーベルばらは永遠にー」が、六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューで開幕しました(11月20日まで。その後、大阪に巡回予定)。
初日から大勢のファンがつめかけています。50年という年月は、オープニングセレモニーに登場した『ベルばら』原作者の池田理代子さんが、「24歳から『ベルばら』を描き始めたので、50年も経ったら生きていないと思っていたほどです。このような日を迎えられたことに感謝しています」と話されたほど長い時間です。
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少女マンガ誌『週刊マーガレット』(現『マーガレット』)に『ベルサイユのばら』が連載されたのは、1972年4月から1973年12月まで。当時、熱狂して読んだ年代はそれなりのお歳になっているはずですが、初日の来場者は若い女性が集まっていました。
縦ロールの巻き髪にしたロングヘアをなびかせ、お姫様のようなファッションの人たちもたくさんいます。エントランスに造られたベルサイユ宮殿の回廊をイメージしたセットの前に列を作り、バラの花などを手にポーズをとって、記念写真をパチリ。展示を見る前から『ベルばら』の世界にひたっている様子で、その人気は今なお、まったく色あせていないことを感じました。
この名作は、池田理代子さんが高校生のとき、シュテファン・ツヴァイクによる悲劇のフランス王妃の伝記『マリー・アントワネット』を読んで感銘を受けたことに始まりました。20歳で漫画家デビューして以来、長年その生涯をいつか書きたいと温めていたのです。少女マンガのテーマが歴史ものというのは、当時、異例だったそうです。しかし、「絶対にヒットさせる」と勝負に出て、結果、2000万部以上を売り上げ、世界中の言語にも翻訳される大ヒット作となりました。
そんな『ベルばら』を、原作でファンになった人もいれば、宝塚歌劇の舞台で虜になった方もいらっしゃるでしょう。テレビアニメもあれば、コミックスの続編として「エピソード編」を楽しんだ方もいるに違いありません。
展覧会の構成も、
序章『ベルサイユのばら』誕生
第1章『ベルサイユのばら』
第2章 宝塚歌劇『ベルサイユのばら』
第3章 TVアニメ『ベルサイユのばら』
第4章『ベルサイユのばら』は永遠に
と、それぞれのメディア別にハイライトがぎゅっとつまり、どれも懐かしく魅力的です。
私は特に第1章に感動しました。なにしろ2000ページにも及ぶ長大な物語を、今回はマリー・アントワネットとオスカルの2人に焦点を当て、約180点の原画をストーリーに沿って展示しています。
1枚1枚貴重な原画に張りつき、穴が開くほど見入ってしまいました。池田さんは絵が下手だとずっと悩んでいたとかで、「50年前の絵が展示されるのは恥ずかしい」と仰います。しかし、原画はどのキャラクターも美しく生き生きとした線で、マリー・アントワネットはかわいらしく、気高く、オスカルはただ美しく、カッコよい!
池田さんは、とても勉強熱心な方なのでしょう。連載中も美大生の知り合いに石膏デッサンから油絵まで教ったり、人体模型を使って人物の動きを研究したり、当時の服装も肖像画や図版を集め、下着まで資料を調べ、素材の質感、たとえばシルクの艶までも描こうとしました。金髪はアメリカ映画の金髪美人の光沢を研究して描いたそうです。
どれも素晴らしく見えましたが、連載が進めば進むほど、絵が上手になっているとか。カラーイラストや当時としては珍しい2色、4色の貴重な原画も展示されています。また、原画に貼りつけられた吹き出しのセリフは、当時の制作中の空気が伝わってくるようで、見ていて幸せな気分になりました。池田さんは『ベルばら』は子供に向けて描いたと言いますが、読む人の年齢を問わず、心に染みるセリフの数々です。
ところで、ダブル・ヒロインとして、王宮の近衛隊で指揮官を務める男装の麗人オスカルは架空の人物ですが、物語自体はフランス革命をめぐる史実に忠実な歴史作品です。そのドラマチックな展開と面白さにより、『ベルばら』でフランス史を勉強したという人は少なくないでしょう。
昔、『ベルばら』を読んでから、フランスのベルサイユ宮殿に行きました。おかげで、フランス史の理解はなかなかのものではなかったかと自負しています(笑)。
宮殿内の「王妃の寝室」は、ルイ14世妃以来、歴代の王妃が使用し、最後にマリー・アントワネットが使用したものです。妃は4人の子供を授かりましたが、そのたびに出産は公開され、ルイ16世だけでなく、フランス全土から集まっていた貴族50人もが寝室に詰めかけ、出産までの様子を見守ったといいます。
民衆の苦しみを知らないと批判され、断頭台の露と消えたマリー・アントワネットですが、その寝室を眺めながら、『ベルばら』のストーリーが交錯して、王妃はまさに激動の時代を生きたのだぁと感慨深く思いました。やはり、歴史に忠実な深みが『ベルばら』を永遠のものにしているのでしょう。
不朽の名作、『ベルサイユのばら』。隣接のカフェには華やかで美味しい『ベルばら』の世界も用意されています。次回は「ベルサイユのローズアフタヌーンティー」(期間限定)を予約して、浸ってみようと思います。
横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)
写真©池田理代子プロダクション・TMS
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