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映画『レジェンド&バタフライ』想像力の広がりがじっくり楽しめる大作/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

芸能・女子アナ 投稿日:2023.02.11 16:00FLASH編集部

映画『レジェンド&バタフライ』想像力の広がりがじっくり楽しめる大作/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

『レジェンド&バタフライ』(全国公開中、東映)(C)2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

 

 1月27日に公開された映画レジェンド&バタフライ』が好評を博しています。

 

 東映70周年記念作品として、20億円を投じて製作された本作品。映像の豪華さはもちろんですが、織田信長に木村拓哉さん、正室・濃姫に綾瀬はるかさん。濃姫を支える福富貞家に伊藤英明さん、各務野に中谷美紀さんなど、キャストも芸達者揃いです。

 

 監督は『るろうに剣心』シリーズの大友啓史氏、脚本は『コンフィデンスマンJP』シリーズや現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』の古沢良太氏とくれば、注目を集めるのは当然かもしれません。

 

 

 ストーリーは、誰もが知っている歴史上のお話プラスアルファ。戦国大名の織田信長が、大うつけと呼ばれた若き日から、結婚後、桶狭間の戦いで今川義元を討ち取り、勢力を拡大、天下統一を目指して突き進み、戦いを重ねるうちに “魔王” へと変貌。しかし、最後は、家臣の明智光秀に謀反を起こされ、本能寺で自害するまで、2人の激動の30年間を描きます。

 

 史実を元にした歴史ものの面白さは、史料に残されていない「すきま」を想像して、いかに描くかというところでしょう。そこに製作者のイマジネーションの豊かさや表現の力量が現れます。

 

『レジェンド&バタフライ』は、織田信長(レジェンド)と、帰蝶と呼ばれた濃姫(バタフライ)のラブストーリーです。わずか10代半ばにして3度めとも言われる政略結婚をさせられた濃姫とは、いったいどんな女性だったのでしょうか。そして、政略結婚で結ばれた2人に、恋愛感情はあったのでしょうか?

 

 実は、それがわかる資料はほとんど残っていません。天下を取ろうと野望に燃えた「レジェンド」を支えた妻が、どんな人だったのかまったくわからず、ただ政略結婚だったことや、2人の間に子供がいなかったことだけしか伝わっていないのは、とても残念なことです。

 

 そもそも「濃姫」という名前からして、「美濃から嫁いできたお姫様」という意味で、本名ではないそう。『美濃国諸旧記』という軍記物に「帰蝶」という名前が出てきますが、それまた「胡蝶」の誤記ではないかという説もあり、とにかく何もわからないのです。

 

 しかし、わからないからこそ、感情や人となりを自由に描くことができます。そうした製作側の熱意や想像力の広がりが、スクリーンを通してじっくり感じられる映画です。

 

 結婚当時15歳ぐらいだったと言われる信長と、同年代の濃姫の関係は、現代を生きる若者たちの恋愛感情とは異なっていたかもしれませんが、木村拓哉さんと綾瀬はるかさんはご承知のように美男美女で、シリアスな演技はもちろん、どこかコミカルなキャラクターも自然体でこなしてしまうのが魅力。

 

 そんな2人の渾身の演技は、始まりは政略結婚でも、ストーリーが展開するにしたがい、夫婦として、あるいは天下統一を目指す同志として、確固たる信頼関係を築き、またお互いに惹かれあっていったことを信じさせてくれます。その一方で、天下取りを目指し、どんどん先鋭化していく信長の孤独と、濃姫の寂しげな心のもちようも痛いほど伝わってきます。

 

 イエズス会の宣教師であるルイス・フロイスは、織田信長について、「正義感と慈悲に関係あることは喜んで実行する男」と評しています。そうした一面は、妻に対してもあったに違いないと納得させられます。

 

 ネタバレしたい衝動に駆られますが、ただひとつお伝えできることは、168分というやや長い上映時間をまったく飽きさせない映画に仕上がっていることです。注目は、やはりクライマックスの本能寺の変。明智光秀は、いったいどうして主君を襲ったのか。これまであまり語られたことのない解釈となっていますが、それを宮沢氷魚さんが確かな演技で支えています――。

横井弘海

東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

( SmartFLASH )

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