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『報道特集』記者も驚いた「持続可能な農業」の可能性…砂漠のような場所がモリモリの緑に/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」

芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2023.03.12 16:00 最終更新日:2023.03.12 16:00

『報道特集』記者も驚いた「持続可能な農業」の可能性…砂漠のような場所がモリモリの緑に/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」

日下アナ(左)と川上さん

 

 今年で3年目を迎える『TBSドキュメンタリー映画祭』。日頃から現場取材を重ねている記者やテレビ制作者たちが、テレビやSNSだけでは伝えきれないドキュメンタリー作品を、映画として劇場公開するイベントです。

 

 今年は、3月17日から東京を皮切りに、大阪・名古屋・札幌で順次開催されます。全国のTBS系列局から多数の応募があったなか、選ばれたのは15作品。そのなかで、サステナブルな農業に焦点を当てた『サステナ・ファーム トキと1%』を制作した川上敬二郎さんにお話を伺いました。

 

 

 川上さんは、東京都出身。幼少期をソ連時代末期のモスクワで過ごしたそうです。1996年、TBS入社。ラジオ記者、社会部記者、『news23』『サンデーモーニング』を経て、現在は『報道特集』のデスクとディレクターを兼任しています。

 

 ドキュメンタリー制作に憧れ、入社当時から希望は『報道特集』でした。念願かない、2008年から約4年半、その後8年ぶりに同番組に戻り、あわせて6年以上も担当しています。

 

――このたびは、映画祭の上映決定おめでとうございます。なぜ今回、農業をテーマに作品を作られたのですか?

 

「『持続可能な農業とは何か』を考えるきっかけを作りたい、問題を提起したいという想いからです。都心から郊外に引っ越したことをきっかけに、私自身も農業に興味を持つようになりました。家族で市民農園を借りて、有機農法を始めてみたのですが、最初は『オーガニックって何?』と妻に聞くぐらい、よくわかっていませんでした(笑)」

 

――日本の農業の問題点はどこにあるのでしょうか?

 

「日本では化学農薬や化学肥料を使う慣行農業が99%を占め、環境に優しい循環型の有機農業は1%に満たないという現実を知りました。

 

『報道特集』では、化学農薬の中でも現在最も多く使われている殺虫剤『ネオニコチノイド系農薬』が、自然にどのような悪影響を及ぼしているのかについて検証しました。

 

 ネオニコチノイド系農薬を使用すると、本来ターゲットにする害虫だけでなく、ミツバチなどの益虫、トンボなどの昆虫にも影響を与えるという強い疑いがあるのです。それだけでなく、宍道湖のウナギやワカサギ、佐渡のトキなど魚類や鳥類、ひいてはヒトにも悪影響が懸念されます。生態系が部分的に破壊され、生物の多様性が失われるリスクが高いのです。

 

 そこで、農薬を使わない農業の可能性を知ろうと、化学農薬や化学肥料に頼らない有機農業の取材を進めました。そのうち、これが究極の持続可能な農園(=サステナ・ファーム)ではないかと、期待が持てるようなユニークな農法にも出会えたのです」

 

――そもそもサステナ・ファームとは、どのようなものですか?

 

「文字どおり、『持続可能な農園』ということです。なにをもって持続可能かということですが、『生き物にもヒトにも地球にも優しい=今後とも人類が大いに続けても大丈夫な農業』という大きなイメージでとらえています。

 

 一般の方にとって農業の話は身近ではないので、映画という長い尺で、そんなサステナ・ファームを探す旅のように、ひとつの流れとして見ていただけたら、いろいろ伝わるのではないかと考えました」

 

――最近、私の周りでも農業に興味を持つ人はどんどん増えてきています。

 

「コロナ禍やウクライナ危機をきっかけに、農業への注目度はますます上がっています。SDGs的な観点からも農業は大きな存在です。先ほど触れた生物多様性の喪失の問題もそうですが、ほかにも食糧危機が心配されるなか、日本では毎年、東京ドーム5杯分のフードロスが出ています。また、土地の耕作など、農業が原因の温室効果ガスの排出は全体の23%もあり、この抑制も大きな課題です」

 

――それらさまざまな問題を解決するカギが、サステナ・ファームの発想に隠されているわけですね。

 

「実は、日本政府もいま急速に有機農業に舵を切ろうとしており、2050年までに25%にすることを目指しています。その有機農業の延長上に、『協生農法』と呼ばれるものがありました。

 

 鳥取県で内科医・桐村里紗さんはすでに実践しています。まだ商業ベースで成り立っているわけではない実験段階の農法ですが、砂地の圃場でどんどん野菜や果樹が育っていくので驚きました。

 

 桐村さんは『砂漠のような場所が1年ちょっとでモリモリの緑になった。最初は砂地だったこの地に、まずは畝をつくり果樹を植え、そのまわりに多種多様な種や苗を植えた。芽吹くまで水やりをしたが、あとは見守るだけ。すると砂地にもかかわらず、野菜や果樹がみるみる育っていった』と表現されています。

 

 それほど手間もかからない方法なので、小規模農園なら高齢者でも実践できるのではないか、空き地や耕作放棄地でもできるのではないか、自給自足にも貢献するのではないか、循環を考えるいい教育材料になるのではないか……などなど、妄想が膨らみました(笑)」

 

――この映画をどのように見てほしいとお考えですか?

 

「全国のいろいろな農地を見て、サステナブルな循環に参加するイメージを持っていただけたらと思います。毎日食べている食品や、農薬や肥料の問題です。虫にも、鳥にも、人にも、地球にも優しい農業のあり方を一緒に考えていきましょう。究極的には自給自足こそが “食の安全保障” だと考えています。そのヒントも見つけていただければ」

 

――気が早いですが、次回作はどんな作品を撮る予定ですか?

 

「これまで子供を取り巻くさまざまな問題を取材してきたので、来年もチャンスをもらえるなら、いじめを予防するような内容の映画を作ってみたいです」

 

 子供の頃から、映画監督になることが夢だったと語る川上さん。一見おっとりしていて、物静かにしゃべる川上さんですが、社会問題を取りあげて報道する熱い情熱が隠されているようです。

 

※『サステナ・ファーム』はヒューマントラストシネマ渋谷で公開。初回は3月18日14時15分~で上映後は川上さんの舞台挨拶も

 

■「循環っていいネ!」3カ条

 

(1)循環に気がつく
(2)循環を妨げない
(3)循環に戻る

日下千帆

1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も

( SmartFLASH )

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