孤独な子育てに悩むお母さん、お父さんにとって、ベビーシッターは頼れる味方。シッターさんとの時間を、子供たちはどんなふうに過ごしているのでしょうか? 今回は、ベビーシッターのマッチングアプリで全国No.1に輝いたこともある中村智子さんにお話を伺いました。
たくさんのベビーシッターのなかから中村さんが選ばれるのは、波乱万丈な人生の荒波を乗り越え、6人の子供たちを立派に育て上げた母親としての経験が、信頼につながっているからです。
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中村さんは、千葉県松戸市出身。機能不全の家庭に育った経験から、家族を持ちたいという願望が人一倍ありました。しかし、若い頃から恋愛依存気味で、ダメンズとばかり出会ってきました。
20歳で妊娠したものの、相手の男性は事件を起こして鑑別所に。出所後、再び事件を起こし、今度は精神疾患で入院。彼の家族に結婚を反対されたため、未婚での出産となったそうです。しかし、お子さんが生後2カ月のとき、彼は自殺してしまいました。
23歳のとき、お見合いで出会った方と結婚。新たに2人の子供に恵まれましたが、夫はアルコール依存で2歳と4歳の子供を連れて行方不明に。このときはSNSで情報提供を呼びかけ、無事発見に至りましたが、失踪を繰り返す夫との生活は難しく、子供を連れて実家に戻ることになりました。
しかし、実家では兄や父からモラハラにあい、鬱状態に。仕方なく子供3人を連れて独立し、派遣の仕事をするようになりました。ところが、2008年、リーマンショックが起きると仕事が途絶え、給食費も払えないほど困窮したこともありました。
その後、現在の旦那様と出会い、彼の連れ子2人と新たに生まれた男の子を足した6人の子供の母となったのです。シングルマザーから息子の父親との死別、結婚、離婚、再婚と苦労を重ね、天職のベビーシッターになれたのは、2019年の春でした。
――ベビーシッターになったきっかけは?
「子供が病弱だったため、2016年頃から深夜のファミレスでバイトをしていたのですが、小学校入学を機に昼の仕事に転職しようと考えました。
ちょうどその頃、ニュースで、保育園の抽選に漏れた母親が、ブログで書いた『保育園落ちた日本死ね!!』という発言が物議を醸し、待機児童問題が注目されるようになりました。
保育関係なら、私も子育て経験を活かして社会貢献できるだろうと考え、保育園で働くことにしたのです。3年ほど勤めた2019年から、休日はフリーベビーシッタ-としてWワークするようになりました」
――集客は大変だったのではないですか?
「ベビーシッターと子育て中のお母さんをつなぐマッチングアプリに登録すると、すぐにたくさんのリクエストをいただきました。ただ、無資格では同一の仕事内容でも賃金に差が出てしまうので、子育て支援員の研修を受けたり、バルーンアーティストや整理収納アドバイザー、片づけ遊び指導士、幼児さんすうインストラクターなど、さまざまな資格を取得しました」
――ベビーシッターの仕事を始めてよかったと思うことは?
「保育園だと、個別でゆっくりお話しする時間が取れません。ベビーシッターは、家庭での保育のアドバイスなど、必要な情報をしっかりとお伝えできます。
また、働く側にとってベビーシッターの仕事は、収入を大きく上げるチャンスです。月収40万円ほど稼ぎながら、趣味などやりたいことの時間も取れるようになりました。私は、ランニング、水泳、登山など趣味を楽しんでいます」
――シッターさんのお仕事とは、具体的にどのようなことをしているのですか?
「一般的には、保育園や幼稚園のお迎えから始まり、食事をさせてお風呂に入れ、就寝させるまでの世話をすることが多いです。また、結婚式などのイベントで子供をひとりにできないとき、会場の控室で一緒に遊んだりすることもあります」
――コロナ禍で変化はありましたか?
「通常は、夕方のお迎えから引き受けることが多いのですが、コロナの期間中はご両親とも在宅ワークの家庭が増えたため、昼間からサポートを頼まれるケースが増えました」
――お母さまからはどのような悩み相談がありますか?
「ご飯を食べない、なかなか寝てくれないというのはよくある相談です。なかなか食べてくれない子供には、おにぎりやふりかけで食事に工夫します。体力がついてきて夜更かしする子供には、お迎え時にベビーカーをやめて歩かせたり、階段をつかって運動させるようにしています。
夕方の時間帯は、親御さんも子供たちも疲れて心の余裕がなくなり、イライラすることが多いので、その前提で子供と向き合わないといけません」
――売り上げNo.1になった秘密は?
「他のシッターさんがやらないような遊びを取り入れています。バルーンアートでお花やワンちゃんを作ったり、折り紙では、駒や宝箱など遊べるものをつくっています。
また、プロフィールには、お母さんが会ってみたいと思う内容を書くよう工夫しています。たとえば、『笑いすぎて子供にうるさいと言われます』とか『あわてんぼうを自覚してます』など、親しみやすい印象を持っていただけるような表現を選んでいます」
――今後の計画はありますか?
「利用者とベビーシッターの数のバランスをよくするために、ベビーシッターの育成をしたいと考えています。子育て中のお母さん、お父さんをサポートし、笑顔あふれる社会にしたいです」
――いま子育てを頑張っているお母さん、お父さんへのメッセージはありますか?
「ほかの子と違うことを恐れる必要はありません。私たちは同じ世界に住んでいても、同じ時間を過ごしていても、思考、感情、感覚すべてが違います。親子でも他人でも絶対に同じはありません。
魔法の言葉『そうなんだぁ〜なるほど〜』 と子供の世界を感じながら一緒に楽しんでいれば、子供自身が自分のことを無条件に肯定できるようになります。
また、大人が一緒に夢中になって楽しんであげれば、とことんやる集中力も育ちます。 競争社会で育った私たちは点数や順位をつけられて生きてきたので、無条件に自分を肯定することが難しくなっているのかもしれません。
ですが、自分の感じていること考えていることに自信を持ち、対話することで、自分と相手が同じでないこと、違ってよいことを学びます。さらに、同じ目標やゴールがあれば、お互いを尊重しながら最適解を見つけることを日々の生活から学ぶようになります。
子供は、大人が失敗談を語ると、大人も完璧ではないことを知り、共感してくれます。その先の改善策やそのときの感情は伝わりやすいもので、『いのちの根っこ』を育てるのです」
人と違う個性があるから、みんなそれぞれの道があるのですね。
■どんな時代も生き抜くチカラを育む3カ条
(1)子供の世界を感じながら楽しむ
(2)対話を意識する
(3)失敗談を語る
撮影・石川雅之
1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も
( SmartFLASH )