社会・政治
トヨタ、全日空、日本製鉄…大企業社員が自民党で“タダ働き”!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.05.16 06:00 最終更新日:2020.05.16 06:00
ほとんどの企業が、「社員の能力向上を目的とする派遣」だと回答した。しかし、これらの企業が、ほかの政党に社員を派遣し続けているわけではない。自民党が長く政権を担っているからこそ、送り込む理由となっていることは明白だ。
現に、自民党総研を通じて、企業から送り込まれた社員たちが時代を動かしたこともある。1980年代前半、歴史教科書問題に端を発し、日韓関係が冷え込んだ。大手都市銀行から総研に出向していた元研究員は、当時をこう振り返る。
「教科書問題で膠着した日韓関係の打開を目指した中曽根総理に、総額40億ドルの経済援助を助言したのが、総研でした。韓国の民生強化に必要なインフラ整備の計画を、私たち研究員が、韓国にある親元の支店員を動員し、たった1カ月でまとめたんです」
こうした動きを、中曽根康弘元首相が評価したという。
「当時の総研が発行していたレポートのうち、緊急性の高い政策提言をまとめた “赤表紙” と呼ばれるものがありました。これは、機密情報として扱われ、首相と政調会長しか見ることができなかった。
トップダウン型の中曽根首相は、この提言内容を、次々と政策に反映していったんです」(前出・政治部デスク)
社員たちを受け入れる自民党側には、こんなわかりやすい “うまみ” もあったという。
「まあ、人の財布で飲み食いできる、というのもあるよ。総研の人と食事に行くと、たいてい親元の企業の人も同席して、高級フレンチや焼き肉をご馳走してくれるんだ。銀座のお姉ちゃんがいるクラブをハシゴするのが、当たり前の時代もあったよ」(自民党幹部)
しかし近年、総研の存在感は薄まりつつあるという。前出・伊藤氏は、こう語る。
「総研が、なにか大きな政策決定に関与したといった話は、もう10年以上聞きません。研究員の部会詣ではあるそうですが、その部会にも、昔日の勢いはないのです」
首相官邸に意思決定を集中させる第二次安倍政権で、その流れが進んだ。前出の党幹部も、「党の発言力が弱まって、“政高党低” になっているから、無理もない」と話す。一方で、現在も自民党が企業からの出向者を受け入れている理由について、こう明かした。
「日ごろからの企業献金や、選挙時の動員や集票で頼れる面は大きい。企業側も、各業界に都合のいい方向に政策を誘導できる、ウィン・ウィンの関係でいられる。
いまでも、運輸族のドンである二階(俊博・幹事長)さんのところに、全日空は選挙の折に、一生懸命になって人を出す。お子さんのひとりも、全日空のOBだしね」
いまも “総研” は、政界と財界の癒着の象徴なのである。総研を通じての献金や、集票をあてにしているのか――。本誌が自民党に問い合わせると、幹事長室がこう回答した。
「総合政策研究所では、民間から幅広く『政策について勉強したい』との依頼があり、研修を目的として受け入れています。したがって、貴社のご指摘は、まったく当たりません。また、具体的な企業名については、従来より公表していません」
だが、前出・政治部デスクは、こう指摘する。
「日本経団連が企業に政治献金を呼びかけているなか、それとは別に、企業が人件費を負担して社員を自民党に派遣していることは、“隠れた政治献金” にほかならない。昔も、令和の世になった今も、この関係は変わっていません」
コロナにあえぐ庶民をよそに、政権与党と大企業の “共存共栄” は続く。
(週刊FLASH 2020年5月26日号)