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米国デモ余波…ホワイトハウス前の道路が「黒人の命も大切」に改名
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.06.07 15:59 最終更新日:2020.06.07 16:54
白人警官により黒人が窒息死した事件をきっかけとして沸き起こった抗議デモは、全米はもちろん、世界中に広がって勢いを増している。この抗議デモは、亡くなった黒人の名前から「ジョージ・フロイド・デモ」と呼ばれている。
土曜日の段階で、ニューヨークでは市内20カ所以上でデモがあり、サンフランシスコではゴールデンゲート・ブリッジが通行止めになった。フィラデルフィアでは町中が人で埋め尽くされている様子が複数で見られ、空撮映像がSNSのトレンドになっている。結婚式直後の新婦がウェディングドレスでマーチする姿も見られた。
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若い世代が主導するデモも多く、サンフランシスコの大規模デモは17歳の少女が主催者だった。ナッシュビルでおこなわれたデモは、ツイッターで知り合った6人のティーンによるもので、そのうち1人はまだ14歳。全部で2万人が参加したそうだ。
筆者の住むシリコンバレーでは、土曜日だけで少なくとも37カ所でデモがおこなわれた。
そのうちの一つ、パロアルト市庁舎前で実施されたものに参加したが、きわめて平和的なものだった。
このデモでは、近隣の市長や、元裁判官、スタンフォード大学関係者などがスピーチをして盛り上がった後、群衆が近くの大通りを練り歩き、最後にまた市役所に戻って、主張のある者がマイクを持って話すというスタイル。ほぼ半日がかりのイベントで、NBA選手のステフィン・カリーも参加し、トランプ大統領の退陣を訴えていた。
参加者たちは事前に呼びかけのあった黒い服を着ている人も多く、手には思い思いのメッセージを書いたプラカードなどを持ち寄っている。ほとんどが切ったダンボールにメッセージを手書きしたもので、圧倒的に多いのが「Black Lives Matter(黒人の命も大切)」というもの。このメッセージは、2013年、黒人差別や暴力に抗議する運動の合言葉となって全米に広がったものだ。
そのほか、司法の平等を訴えるもの、犠牲になった黒人たちの名前をあげるもの、団結を求めるもの、個人的なものまでさまざまである。「IF NOT NOW, WHEN?(今じゃなかったら、いつやるの?)」という、なんだか馴染みあるフレーズも見つけた。
警察署の隣がデモの場所だったが、警官は交通規制している数名を目にした程度で、あまり目立ってはいなかった。人々は「Don't shoot(撃たないで)」「No」などと声をあげながら、わりと早いペースで歩いて回る。全行程を歩くと7kmにもなる。途中、車の運転手たちがクラクションを何度も鳴らして共感の合図を送ってきたのが印象的だった。
アメリカでのデモの多くはこうして平和的におこなわれている。警察や軍による暴力の映像は、時おりSNSで報告されるが、最近では暴動の映像は少なくなった。
だが、首都ワシントンでは、軍を配備した大統領と、それに抗議する市長との対立が広がっている。
市長は6月5日、ホワイトハウスの目の前の道路の道幅いっぱい、ほぼ2ブロックに渡って、黄色い文字で「BLACK LIVES MATTER」という文字を書き上げた。
ボランティアと市の職員が夜中の3時に作業を始め、一晩で書き上げたそうだ。市長は翌日、目の前の広場を正式に「Black Lives Matter Plaza(広場)」と名付け、道路標識も新たなものに取り替えた。この場所は、大統領の記念撮影のために、軍がデモをしている群衆に向かって催涙弾を撃った場所だ。
さらに、その横には、同じ黄色のペイントで「Defund The Police」という文字が書かれた。警察への資金を打ち切れというもので、デモの間、しばしば聞かれるようになった言葉だ。多くの人が警察改革を望んでいるが、活動を停止してほしいとまでは思っていない。この行動の指揮をとった人物によると、こちらの文字は市の許可を取らずにやったそうだ。
多くのデモが「Solidarity(団結)」を訴えているが、こうした行動の違いは出てしまう。暴力や略奪のニュースは減ってきたものの、まだしばらく混乱は続きそうだ。(取材・文/白戸京子)