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『風と共に去りぬ』は配信中止…米国デモの意外な影響

社会・政治 投稿日:2020.06.12 11:00FLASH編集部

『風と共に去りぬ』は配信中止…米国デモの意外な影響

アメリカで続くデモ(写真:ロイター/アフロ)

 

 アメリカでは、黒人男性ジョージ・フロイド氏の死に抗議するデモが、いまも激しく続いている。そして、このデモが、アメリカ社会に大きな影響を及ぼしている。

 

 これまでにニューヨークやロサンゼルスなど少なくとも16の都市が警察予算を減らし、学校や社会福祉などに回すと発表。各地の警察署が、警官が容疑者を取り押さえる際、「チョークホールド」と呼ばれる首の抑えつけを禁止にした。

 

 

 事件の舞台となったミネアポリスでは、警察の解体が議会で公約され、新たな治安維持の制度を作るとしている。野党は、連邦警察改革の包括法案を下院に提出した。

 

 アマゾンは6月10日、同社の顔認証システムを向こう1年間、警察に使わせないことを公表した。アマゾンのインターフォン「Ring」が集めた情報は警察に提供されていたが、認識の甘さやプライバシーの観点から批判を受けていたのだ。

 

 顔認証に関しては、IBMが8日、警察が集団監視や人種のプロファイルに使用することに抗議し、撤退を表明している。

 

 また、人気番組『全米警察24時 コップス』が警官の野蛮さを理由に、また映画『風と共に去りぬ』は人種差別的ということから配信が停止された。

 

 黒人を擁護する動きも多く、黒人オーナーの店などをリストアップして寄付を募るアプリができ、ウーバーイーツは黒人オーナーの店からのデリバリー手数料を無料にした。

 

 SNSの「レディット」共同創業者のアレクシス・オハニアン氏は、5日、役員を退き、後任に黒人を希望した。オハニアン氏は今後、自身が保有するレディット株からの利益を黒人コミュニティに寄付することも表明。これを受けて同社は、10日、後任に同社初の黒人役員を迎えた。

 

 SNS業界では、多くの科学者たちがストライキを始めた。#ShutDownSTEM、#ShutDownAcademiaなどのハッシュタグでおこなわれたこの運動は、その日の研究を休み、人種差別やアカデミズムの人種の不均衡などを考えることにあてるというもの。

 

 ハーバードやイェール、MITなどの研究者5000人以上が参加し、科学誌ネイチャーはその日の記事掲載を取りやめた。

 

 また、アメリカ最大の自動車レースNASCARは、10日、すべてのイベントで南部連合の旗を掲げることを禁止した。南部連合旗は、南北戦争時代に奴隷制を支持した南部が使用した歴史ある旗だが、人種差別と白人至上主義のシンボルだと見られている。

 

 実は、今回の抗議デモで一番大きな影響を受けているのは、トランプ政権であろう。現政権にとってカトリック信者は大切な岩盤支持層だが、そこからも批判の声が出ている。

 

 ニューヨーク州バッファローで75歳の白人男性が警官に突き飛ばされ重症となった事件があり、大統領はこの男性について、わざと派手に倒れているとツイートして批判を浴びた。この男性はカトリック信者だったことが批判に拍車をかけた。

 

 4日に発表された調査によると、白人のカトリック信者からの支持率が3月に60%だった大統領の支持率は、5月には37%まで下がっている。

 

 デモの余波が、少しずつ確実に今のアメリカ社会を変えている。(取材・文/白戸京子)

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