社会・政治
山口組分裂1年で「覚醒剤の値段が下がりすぎた」と組員が嘆き
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.08.16 06:00 最終更新日:2016.08.19 17:31
「神戸山口組は、直参組織の若頭が殺されているのだから、『返し(報復)』をするのが当然だろう。でも結局、何も返しができていないじゃないか。俺らはヤクザなんだから、堅気になめられたら何もできないんだよ」
関東在住の六代目山口組系組織の組員は、そう言ってはばからない。
2015年8月27日、六代目山口組が分裂し、神戸山口組が結成されてから間もなく1年が経過する。
この間、全国で80件を超える抗争事件が勃発しているが、もっとも衝撃的な事件は5月31日、神戸側の直参組織・池田組の高木忠若頭が、岡山市内で射殺された事件だった。
逮捕されたのは、六代目山口組の中枢である弘道会傘下組織に所属する山本英之容疑者。山本容疑者は検察の調べに対し「六代目山口組と対立状態にあった神戸山口組傘下の組員を殺害しようと考えた」と供述。射殺事件は抗争を象徴するものになった。
しかしそれに対し、神戸側はなぜ返しをしないのか。ヤクザ界に詳しいジャーナリストはこう分析する。
「神戸側の執行部は、とにかく返しをしないように傘下団体を必死に抑えています。報復行為をすれば、特定抗争指定暴力団に指定されることは目に見えているからです。一方の六代目側は、捜査の成り行きを見守っています。
警察は山本容疑者の共犯者を追っており、逮捕できれば、組織犯罪処罰法で弘道会のトップを逮捕できると考えているようです」
1984年、山口組は四代目組長をめぐり山口組と一和会に分裂、死者29人、負傷者70人(警察官、民間人4人の負傷者を含む)を出す「山一抗争」を起こした。
「当時は、抗争では実行犯しか逮捕することができなかった。しかし、1999年の組織犯罪処罰法により、事件が発生すれば、その意思決定に関与できる地位にいる幹部を罪に問えるようになった」(警視庁組織犯罪対策課の刑事)
そのため、現在は抗争といっても車で事務所に突っ込んだり、建物に発砲したりする程度にとどまり、敵対する組員に危害を加える事件は少なくなっている。
はたして分裂した2つの山口組の抗争は激化していくのか。いまヤクザ社会には少しずつ変化が見えていると、前出・警視庁の刑事が話す。
「分裂の行方を見守る立場を取っていた団体が、6月ごろから神戸側との交流を始めている。『2つの山口組』という存在が、ヤクザ社会で既成事実化しているようだ」
だが、対立の構図がかたまるにつれ、末端の組員には疲労の色がいっそう濃くなっているという。前出の関東在住の暴力団関係者が語る。
「分裂騒動後、何か事件が起こると、両山口組以外の組織でも組から待機を命じられることが増えた。自分のシノギがろくにできなくなり、手っ取り早く稼ぐため、ご法度だった覚醒剤の売買に手を染める者が多くなっている。
そのため覚醒剤の値段が下がってしまった。以前は1kg600万円で売れたものが、今は400万円ちょっとにしかならない。最近10年で今がいちばん安いくらいだ」
さらに、別の暴力団関係者は次のように話す。
「東京にある組織からすると、山口組分裂はある意味、チャンスともいえる。双方が抗争を繰り返し弱体化してくれれば、山口組を関東から追い出すことができる。表向きは友好関係を保っているが、現場ではシノギを奪い合っているのが現状。両方の山口組が壊滅すれば、東京から日本最大のヤクザ組織が生まれるかもしれない、と思っている」
分裂から1年で見えてきたのは、ヤクザ社会の衰退なのか、それとも――。
(週刊FLASH 2016年8月30日号)