2万8000人。この数字は警察庁が2020年4月に発表した、2019年末時点での全国の暴力団員の総数だ。ピーク時には18万人を超える数がいた暴力団だが、初めて3万人を割り込んだ。
では、我々の身近な地域には、まだどれほどの暴力団員がいるのか。そこで本誌が、各都道府県の警察本部や「暴力追放センター」への取材をもとに、各都道府県別に暴力団の最新勢力を調査した。
警察庁によると、2019年末で最大勢力の「六代目山口組」は8900人で、1都1道2府39県とほぼ全国に勢力を持っている。次いで「住吉会」が4500人で、1都1道1府15県に。
六代目山口組から分裂した「神戸山口組」は3000人で1都1道2府28県。「絆會」(2020年に任侠山口組から名称変更)は610人で、1都1道1府9県という情勢だ。
全国的に暴力団員は減少傾向にあるが、特に注目される地域が存在する、と暴力団に詳しいジャーナリストは話す。
「5月に岡山県で、神戸山口組系池田組の幹部が、六代目山口組系の幹部に銃撃される事件が起きた。岡山県は、神戸側の組員が六代目側より多い地域なので、『勢力を取り返すためにピンポイントで起こした抗争事件だ』と、みる向きがある。
また、兵庫県も神戸側の組員が多い地域だが、六代目側が勢力を増している。山口組が分裂して5年が経過し、六代目側が相手を切り崩しており、次第に神戸側が追いつめられていることが窺える」
六代目山口組と神戸山口組の抗争が激化しているとして、2020年1月に愛知県・岐阜県・三重県・京都府・大阪府・兵庫県では、両組織を「特定抗争指定暴力団」に指定。さらに岡山県の事件を受け、7月7日には岡山県・鳥取県・島根県・愛媛県も指定に加わった。
一方、「暴力団を離脱する組員が後を絶たないのは、金銭面の事情が多い」とジャーナリストの溝口敦氏は言う。
「これだけ不況で、さらに暴対法などの締めつけも強くなったのに、各組織の会費などの上納金の吸い上げは、厳しいままです。払えない者は “飛ぶ”、つまり音信不通になってやめていきます。
暴力団の平均年齢は、いまや50代後半になったと感じます。各組織とも、執行部は60代から70代。もう若者はいません。20代や30代は、組の宝物ですよ」
ただ、やめた組員も「暴排条項」で5年間は口座を作れず、クレジットカード・携帯電話・不動産なども、いっさい契約できない。離婚している者も多く、子供も父親に寄りつかず、“孤立” する者も多い。
「警察や暴追センターにお世話になれる者は、まだいいでしょう。最後のセーフティネットだと思って、犯罪に手を染め、刑務所に “逃げ込む” 者もいます」(溝口氏)
都内在住の暴力団関係者も、離脱した組員の窮状を話す。
「やめてから、生活保護を受ける元組員も多い。個人で新たなシノギに手を出そうとする者もいるが、60代になって参入するのは、まず無理。待っているのは、孤独死だ……」
そうしたなか、コロナ禍に乗じて、暴力団の新たな資金源が生まれているという。
「休眠会社を買い取って、給付金や貸付金を得ようとする詐欺が増えている。貸し付けを受け、返済が始まったら2〜3カ月、“金利だけ” を払う。そうしないと詐欺だとばれるからね。その後に会社を倒産させれば、それ以上の返済はなくなるというわけだ。
ほかにも申請を代行して、カネを抜くことも。1社30万円抜いて、100社分やれば3000万円だ」(前出・暴力団関係者)
勢力は衰えても、まだまだしぶとい。以下では、47都道府県の暴力団の最新勢力をマップでご紹介する。
(週刊FLASH 2020年7月28日・8月4日号)