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元検事が懺悔告白「こうして私は冤罪をでっちあげた」

社会・政治 投稿日:2020.08.16 11:00FLASH編集部

元検事が懺悔告白「こうして私は冤罪をでっちあげた」

 

 ビデオジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が司会を務めるオンライン討論番組 「マル激トーク・オン・ディマンド」。ゲストに呼ばれたのは、元検事の市川寛さん。市川さんは、上司のプレッシャーに負けて容疑者を自白に追い込んだが、調書の捏造を裁判で明らかにするという、驚くべき経験を持っている。

 

 

神保 市川さんは2001年、検事として「佐賀市農協背任事件」と呼ばれる事件で、被疑者の農協の組合長さんの取調べを担当し、彼に実際にはやっていないことを「やった」と言わせた上で、嘘の自白調書を書いたことを『検事失格』という著書で告白しています。

 

市川 端的に言えば、これは「不正融資事件」です。佐賀市農協がある組合員に約1億円の融資をするに当たり、担保価値を上回る融資をしてしまった。その組合員は自分の不動産を担保にしていましたが、融資額に対して足りないものでした。融資に当たって農協が不動産の価値の水増し評価をしたわけです。

 

神保 そこで、検察は農協の組合長をはじめとする幹部たちが組織ぐるみで不正融資していたというシナリオを描いたのですね。

 

市川 そうです。さらに有り体に言うと、とにかく組合長を逮捕したかったということです。この事件の内偵捜査をしていた当時の次席検事によれば、本当はその先の組合長とつながりがある地方議会議員のところまで行きたかったわけです。その前提として、組合長を逮捕したかった。それだけでしたね。

 

神保 この事件を担当したのは佐賀地方検察庁(佐賀地検)です。警察が着手した上で検察に回すのではなく、最初から佐賀地検がやっている。佐賀地検には特別捜査部(特捜部)がありませんから、独自捜査だったのですね。

 

市川 そうです。

 

神保 冤罪はどのように作られていったのでしょうか?

 

市川 準備不足の一言に尽きます。裁判所もこの事件で不正融資があったことは認めてくれました。ただ、事件の焦点は誰が不正融資を考え、決裁をしたのかというところにあるんです。つまり、最終的に誰が融資にゴーサインを出したのか。ですから、この事件は、その犯人探しの事件といえます。

 

 ただ、捜査をした時点で、すでに融資から5年近くが経っていました。そのために関係者の記憶も薄れ、証拠書類もどこまで残っているかわからない。担保の水増し評価があったことは証拠からも辛うじてうかがえたのですが、誰が考えたのかがわからない。

 

 問題の融資について最終的な決裁文書あるいは稟議書が1枚出てきたのですが、ここに組合長の印鑑がありました。だから、(上司の)次席は「これはいける」と。

 

 でもこれは、本当は乱暴なんです。どんな事情で押されたのかを考えていないのですから。極端な話、他人がハンコを押したかもしれない。農協は大きな組織ですから、組合長は毎日、どれだけ多くの決裁をしているかわかりません。もしかしたら、事情を知らずに押してしまったのかもしれない。

 

神保 ハンコだけでは、組合長自身が水増しを認識していたかどうかはわからないですよね。

 

市川 そうなんです。私は「それはいくらなんでも」と思ったのですが、情けないことに上に逆らえなかった。次席検事に対して面と向かって「それは変じゃないですか」とは言えず、結局止められなかったんです。

 

神保 組合長さんは身に覚えがないことなので、当然否認する。

 

市川 はい。組合長に水増しの認識はありませんでした。

 

神保 物証もなかったので、残るは自白しかないわけですね。

 

市川 はい。それで私は取調べのとき、組合長に「弱みを握られているだろう」とか「キックバックがあったんだろう」と言ったのですが、組合長は「そんなことは絶対にありません」と烈火のごとく怒り出して、手詰まりでした。それでも、次席は自白をさせろというのですから。

 

神保 市川さんは「どんな手を使ってでも自白を取る」という検察の論理に従いつつも、「このやり方はおかしい」とも思っていた。それなのに、どうして最終的に検察の論理に傾いてしまったのですか?

 

市川 答えるのがとても難しい質問です。組合長さんには本当に申し訳ないのですが、当時の私は、次席検事のやり方が気に入らないし、逆らえない自分も気に入らない。とにかく怒りで煮えたぎる毎日を過ごしていました。

 

 組合長は他の逮捕者たちから10日遅れて逮捕されていました。ですから、先に他の逮捕者たちを起訴した検事たちは、もうお役御免で、年度末の送別会で酒を飲んだりしていました。それで私だけひとりぼっちになっているという怒りもあった。

 

 要するに、貧乏くじを引かされたという心理です。とにかく腹が立っていました。組合長さんには本当に申し訳ないのですが、私は組合長さんに八つ当たりをして、非人間的な取調べをしてしまった。今ではそう思っています。

 

神保 年齢もずっと上の方ですよね。

 

市川 70歳を超えられていたと思います。証拠がないので、まともな追及ができない。だから、勢いで「これはどうなんだ!」と言うしかなかった。まるで兵隊が補給もないまま前線で戦っているようでした。次席からは毎日、毎日、「自白はまだか」と言われる。

 

神保 組合長さんは後で、取調べのときに検事が机をたたいたり、大きな声を出したり、「ぶっ殺す」と何度も言ったと語っていますが、そこまで言った記憶はありますか?

 

市川 それは、この事件を語る上で私の一番辛いところです……。申し訳ないのですが、「ぶっ殺すぞ」という暴言を吐いたことは、私の記憶では一度しかないんです。組合長さんは「毎日言われた」とおっしゃっています。ただ、一回は間違いなく言いました。「ぶっ殺すぞ」と大声で言ったのは、私自身はっきりと覚えています。

 

神保 勾留も長かったですね。まず10日の勾留をして、さらに10日の延長をしています。

 

市川 そうです。

 

神保 身に覚えのない容疑で逮捕され、若い検事から20日間も怒鳴り続けられれば、71歳の身には相当に応えたのではないかと思います。それで最後には組合長さんも、検察側の言いなりになって、市川さんに言われるがままに、自白調査に署名したのですか?

 

市川 これも私の記憶と組合長の話とは違っているので、心苦しいところです。私が証拠書類のある数字の矛盾を発見したものですから、その矛盾をネタにして「どうなんだ」「どうなんだ」と追い込みました。怒鳴ってはいないと思うのですが……。すると組合長さんは「参りました」とおっしゃって、そこからは「言いなり」になったというのが私の記憶です。

 

神保 言いなりといっても、組合長が自ら進んで何かを供述したのではなく、検察が作成した調書に署名しただけですね。

 

市川 そういう意味です。

 

神保 市川さんは本の中でそのときのことを、「検事として死んだ瞬間だった」と書いています。若い市川検事が、ずっと年配の組合長さんに「殺すぞ」などという暴言を浴びせ、否認を貫いていた組合長に最後は「やりました」と言わせ、調書に署名もさせることに成功している。もし裁判中に市川さんがカミングアウトしなければ、組合長は有罪になったと思いますか?

 

市川 裁判で組合長の自白調書が採用されたら、有罪になった可能性はあります。きれいな自白調書をでっち上げましたから。

 

神保 しかし、組合長が捜査の違法性を主張し、市川さんが自らそれを認めたことで、組合長は冤罪にならずに済んだ。でも、実際には市川さんが組合長さんに暴言を浴びせている映像や録音などの証拠は何もないわけだから、検察側は「組合長が勝手に言っているだけだ」で押し通すこともできた。密室での取調べだから、市川さんが認めさえしなければ、真実がどうだったのかは誰にもわかりませんよね。

 

市川 そうですね。

 

 

 以上、『暴走する検察~ 歪んだ正義と日本の劣化』(光文社)をもとに再構成しました。「黒川問題」であぶり出された官邸・メディアとの癒着、ゴーン逃亡から見る「人質司法」、「作られる」自白、進まぬ取調べの可視化……。ジャーナリストの神保哲生氏と社会学者の宮台真司氏が、検察について徹底討論。

 

●『暴走する検察』詳細はこちら

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