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コロナ禍で病院を狙う「助成金詐欺師」本誌直撃に悪びれず…
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.08.28 06:00 最終更新日:2020.08.28 06:00
日本病院会などの調査では、新型コロナウイルスの影響で全国の病院の3分の2が、2020年4月時点で赤字に転落した。国や都は医療・検査体制の強化を急ぐが、一方で外来患者の減少や、収益性の高い健康診断の休止などで、病院の経営は苦しい。
そんななか、資金繰りに苦しむ病院経営者のもとに、怪しげな給付金や助成金の案内が届いているという。2020年6月、製薬会社の元社員から、この助成金を案内された都内の病院経営者が語る。
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「旧知の元営業担当者が、数年ぶりに病院を訪ねてきたのです。『コロナ禍による医療崩壊を食い止めるため、ある財界関係者が管理する資金を財源に、医療法人への助成金支給が始まった』という話をされました。
その財界関係者の名前を検索すると、大手エンジニアリング会社の元取締役で、いまは一般社団法人の理事長をしていました。厚生労働省管轄の整備事業の完成パーティで撮影された写真も見せられましたよ」
給付の対象は病床数150以上の民間病院で、「前年度の診療報酬と病院の総資産額を合わせた金額の、10倍の助成金が出る」と言われたという。
「しかも、印鑑登録証明書や住民票などを用意して、審査担当者と面談さえすれば、3日程度で振り込まれるというのです。ただし、他人に相談したり、ほかの医師を紹介するのはNGだと。『こうした助成金の噂が広まると、悪質なブローカーの介入を招くから』という説明でした」
話に乗るつもりだった病院経営者だが、知人の法曹関係者から「詐欺ではないか」と指摘を受け、すんでのところで断わりを入れたという。詐欺事件に詳しいジャーナリストで、『週刊報道サイト』編集人の佐藤昇氏が推測する。
「典型的な “助成金詐欺” の手口ですね。実際には、申請後すぐに “手数料” を要求してくるつもりだったと思います。『3日で支給されるから』と言われて、ゆっくり考える間もなく、手数料を払ってしまうことが多いのです」
この病院経営者が渡された文書に書かれていた資金管理者の連絡先は、都心の旧財閥系有名ビル。実際にそこに入居しているのは、シェアオフィス会社だ。話を持ち込んだ製薬会社の元社員に本誌記者が電話で直撃すると、悪びれる様子もなく、こう回答した。
「資金は実在します。○○大学病院の事務長からの紹介ですし、間違いない案件です。私は資金管理者とも、議員会館の会議室で面談しています」
2020年7月、外食大手「コロワイド」の創業者・蔵人金男会長(73)が、M資金(GHQの秘密資金)詐欺に遭い、30億円超を失っていたことが報じられた。今回の病院経営者への案件も、それと似た手口だ。
「詐欺師は “名優” で、『秘密資金の代理人』などの荒唐無稽な設定でも、それらしく見せてしまうんです。今回の案件のように、知人を通じて持ち込まれることが多いのも特徴です。知り合いを一人介するだけで、相当に信用度が増すのです」(佐藤氏)
コロナ禍の陰で、詐欺師たちがうごめく。
(週刊FLASH 2020年9月8日号)