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アメリカの二重嵐で活躍「ハリケーン・ハンター」がSNSで話題に

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.08.28 19:16 最終更新日:2022.12.07 18:51

アメリカの二重嵐で活躍「ハリケーン・ハンター」がSNSで話題に

ハリケーン「ローラ」に突入(写真・NOAA)

 

 巨大ハリケーン「ローラ」が、8月27日深夜、ルイジアナ州に上陸した。中心付近の最大風速(1分平均)は67メートルで、上陸したハリケーンではアメリカ史上5番目の強さだという。

 

 上陸前にはもう一つのハリケーン「マルコ」が進路上に並び、大西洋上に2つのハリケーンが存在する珍しい事態となった。そのため、予報がきわめて困難とされていた。

 

 

「狭い範囲にハリケーンが2つ並ぶと、お互いが影響しあい、通常の進路とは異なる動きを見せることがあるんです。前例も極めて少ないのですが、こうした現象は『藤原の効果』と呼ばれています。1921年、中央気象台の所長だった藤原咲平が提唱したことによります」

 

 こう話すのは、気象予報士の白戸京子さんだ。
 予報が困難とされるなかで、今回は比較的、的確な避難指示を出すことに成功したという。その背景には、「ハリケーン・ハンター」と呼ばれる人たちの活躍があった。

 

「ハリケーン・ハンターは、アメリカ空軍とNOAA(米海洋大気庁)が合同で調査する公務員集団です。以前は海軍も参加していました。歴史は古く、第2次世界大戦中に、台風の目へ飛行を成功させたことから始まっています」(白戸さん)

 

 ハリケーンの中心部に飛行機で何度となくダイブを重ね、気象情報を収集するのが任務だ。現在、空軍とNOAA合わせて12機の観測機があり、1回の飛行に10名前後の専門クルーが関与する。

 

 飛行時間は通常8~12時間、一度の飛行で数回ハリケーンの目に突入し、ドロップゾンデと呼ばれる観測機器を落下させたりする。これにより予報の精度が25%ほど上がるという。

 

「今年はすでに300時間ほどの飛行をしているそうで、『ローラ』の観測は8月20日から合計7回おこなわれました。飛行機が飛ぶ場所は観測しにくい海洋上で、およそ1500メートルから3000メートル付近。非常に危険な任務ですが、いちばん恐ろしいのは、強風より嵐の乱流で急落下することだそうです」(同)

 

 ハリケーン・ハンターたちが撮影した「ローラ」の映像はSNS上にもたくさん載せられ、その迫力や美しさから感嘆の声が集まっている。

 

「今年はハリケーンの当たり年で、すでに年間平均の個数を上回る13個に名前がついています。今回のように立て続けに嵐ができると、2週間休みなく24時間稼働することもあるそうです」(同)

 

 飛行機を飛ばして観測データを集める試みは、最近では中国でも始まっている。台風が増えている日本でも、近いうちに登場するかもしれない。

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