記録的なヒートウェーブと山火事で、まるで「炉の中にいるようだ」と形容されたアメリカ西部に、今度は急激に寒気が流れ込み、雪の降るところが出てきそうだ。
9月最初にある3連休はレイバーデー(「労働者の日」)で、例年ならパレードを見たり、家族でバーベキューしたり、アメフトを見たりして過ごす。今年はどれも叶わず、代わりにやって来たのは記録的な高温と山火事、そして停電だった。
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気象予報士の白戸京子さんがこう話す。
「先月54.4度を記録したカリフォルニア州のデスバレーは、9月5日の最高気温が51.66度と、9月として最高記録を更新しました。続く6日は48.88度でしたが、その日、デスバレーをわずかに上回ったのがロサンゼルスで49.4度、観測史上1番の記録となりました。
他にも霧で有名なサンフランシスコが37.77度、パームスプリングスは49.99度など、各地で灼熱の記録が塗り替えられています。電力需要の増えたカリフォルニア州は、連休中も計画的に停電をおこなっていて、SNSでは『no AC(ノーエアコン)』の話題で盛り上がったようです」
先月半ばから大規模な山火事が発生していたが、今回のヒートウェーブで火事はさらに増え、焼けた面積は200万エーカー(8000平方キロ)を超えたという。現在は1万4000人を超える消防隊が州内の20カ所以上で奮闘中だ。
州南部のサンバーナーディーノ郡で5日に起きた火事は、パーティーで違法に火薬を使ったことが原因だった。妊娠中の赤ちゃんの性別を告知する「ジェンダー・リビール」という最近流行のパーティーでは、カウントダウンとともに、青やピンクの色を発表する。
発表の仕方に工夫を凝らすのだが、火薬を爆発させて色のついた粉を大きく撒き散らしたり、スタジアムのモニターに映し出したり、橋をライトアップするなど派手な演出も見られる。
2年前、アリゾナ州のパーティーでは火薬装置が180平方キロの山火事を引き起こし、主催者は8億7000万円の賠償を命じられた。今回の火事でも、3000名の住民が避難し、60台の消防車と600名の消防士が消火にあたっている。
本格的な山火事シーズンは9月、10月でこれからが本番だが、連休が終わると同時に今度は北から冷たい寒気が流れ込んできた。7日までに73日連続で気温が32度以上だったが、8日は一転して雪の予報が出ている。日中の気温差は30度以上だ。
「山火事の多いカリフォルニア州は雪こそ降らないでしょうが、乾いた強い風が吹き込むと、さらに山火事の危険が高まります。地元ではサンタアナ風やディアブロ風と呼ばれて、非常に恐れられているんです。
今回の天気の急変は、先週日本付近を通過した台風9号が影響しています。台風の強いパワーが上空の流れを大きく蛇行させ、空気が南北に大きく揺れたまま数千キロ離れたアメリカ大陸に到着し、北の冷たい空気をはるか南まで運び込んでいるのです」
特別警報に匹敵する発達を見せた台風10号も、いずれアメリカ大陸に影響を及ぼすとみられる。レイバーデーは、翌日から学校の始まるところも多く、夏の終わりを告げる祝日と言われている。今年はとても極端な夏の終わりとなりそうだ。