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マツタケに大異変…絶滅危惧のうえ「中国人が美味に目覚めた」

社会・政治 投稿日:2020.09.30 06:00FLASH編集部

マツタケに大異変…絶滅危惧のうえ「中国人が美味に目覚めた」

大東通商が持つ、中国の生産加工場の作業風景。さまざまな調理に用いやすいように、縦割りスライス・チップと分けて加工している(写真提供・大東通商)

 

 日本で売られるマツタケの9割以上は海外産。その海外産の6割を占めるのが、中国産だ。中国雲南省、四川省にまたがる山岳地帯は、世界最大のマツタケ産地。大手飲食チェーン店などと取引している「大東通商」は、現地でマツタケを加工し、日本へ輸入する。大東通商の東野文武社長が語る。

 

「中国は日本より収穫時期が早く、7月後半に第一波が始まります。6~7月に価格が決まり、8月に加工して、9月から日本で販売する流れです。

 

 冷凍加工したものの相場が、1kg6500円ほど。2020年はコロナの影響で、7~8月の段階で例年の6割しか需要がありませんでした。今は9割ほどに回復しましたが、外食が厳しいと、うちの会社も厳しい」

 

 2003年の同社創業以前から、東野社長はマツタケ輸入に携わり、中国の状況を見てきた。

 

「私がマツタケと関わり始めた20年前、中国人はマツタケを食べませんでした。外貨を獲得するため、100%が輸出品でした。それが、医食同源で『マツタケを食べれば免疫力が高まる』という考えが広がり、お金持ちの人が食べるようになったのです。いまは現地価格も高騰しています」

 

 漢方的な美味に目覚めた中国人たち。変化は早かった。

 

「10年ほど前に産地の近くに空港ができ、3~4年前に中国の流通大手が自社ジャンボジェット機で買いつけるようになりました。いまは、毎日の相場がリアルタイムで実況されます。アプリで数回タッチするだけで簡単に購入できて、2~3日で家庭に届くようになっています」(同前)

 

 世界最大の産地でも、当然、無尽蔵に採れるわけではない。

 

「中国では10年ほど前から、減少を食い止めるための法律があり、売り上げの数%を山の管理費として徴収されるのです。だから、収穫量は安定しています。ただ採取場所が、どんどん奥地、高地になっているのは心配です」(同前)

 

 まだ採れるとはいえ、減少中なのは間違いない。そうなれば、最後の希望の光は「人工栽培」だ。現在、成功しているのは、「マツタケから菌を分離して菌を持ったアカマツ苗を作る」段階まで。

 

「『苗木を山に植えて、そこから広がった菌糸が2年ほど残った』というのが実験の “最高到達点” です。菌糸が定着して、そこからマツタケが生育しなければ、人工栽培成功といえません」(前出・山中氏)

 

 だが、山中氏の森林総合研究所は奈良県森林技術センターと共同で、“代用きのこ” ともいえる近縁種「バカマツタケ」の人工栽培に成功した。

 

「香りはマツタケと、ほぼ同じ。商品化できるのは、まだ先ですが、マツタケの約1割の値段で市場に出せるのではないでしょうか。人工栽培のおおまかなやり方は一緒です。20年ほどかかると思いますが、マツタケの人工栽培も不可能ではないでしょう」

 

 マツタケが日常に。再び、そんな日がーー。


(週刊FLASH 2020年10月13日号)

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