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受賞者が語る「賞金ゼロでも『イグ・ノーベル賞』で人生が一変した!」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.10.04 11:00 最終更新日:2020.10.04 11:00

受賞者が語る「賞金ゼロでも『イグ・ノーベル賞』で人生が一変した!」

 

 日本人が14年連続受賞していることで話題となった「イグ・ノーベル賞」。2020年は、「ヘリウムを吸ったワニの鳴き声はどう変わるのか」という研究で、京都大学霊長類研究所の西村剛准教授が「音響学賞」を受賞した。

 

 イグ・ノーベル賞(Ig Nobel Prizes)とは、ノーベル賞のパロディだ。否定の接頭辞「ig」をつけた造語であり、「イグノーブル(ignoble)=下品、恥ずべき」と掛けたジョークでもある。

 

 

「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられる賞で、創設は1991年。雑誌『Annals of Improbable Research; AIR(風変わりな研究年報)』の設立者で、編集者のマーク・エイブラハムズ氏が仕掛け人。毎年、米国のハーバード大学で授賞式が開催されている。

 

 2018年に「医学教育賞」を受賞したのが、長野県駒ヶ根にある、昭和伊南総合病院消化器病センター長の堀内朗氏だ。みずからの体内に入れた内視鏡を操作し、大腸を検査した論文「座位で行う大腸内視鏡検査を自ら試してわかった教訓」に対してという、じつに興味深すぎる理由で受賞した。

 

 今回、堀内先生に受賞時の様子や、その後の変化について話を聞いた。

 

 

――イグ・ノーベル賞の受賞は、どのように知らされるんですか?

 

「メールで来ました。そのメールは、フォーマルなものではなくて、『世の中にはイグノーベル賞というものがありまして、もし差し上げることになったら受け取っていただけますか?』というニュアンスでした。

 

 受賞した主論文のテーマは、『自分のお尻からスコープを入れる』でしたが、副論文のほうは、“このスコープを使うことで、通常の内視鏡検査が困難だった方も簡単に検査できるようになる” という真面目な内容なんです。

 

 そのメールには、『主論文も副論文も、きちんと読んで決めた』と書いてあったんですが、真面目なんだか不真面目なんだか(笑)。息子に、こんなメールが来たよって話したら、『それはフェイクだから捨てなさい』って言われました(笑)。いちおう、『いただけるものは、なんでもいただきます』と、返事を送りました。

 

 その後、1カ月ほどして『授賞式があるので来ていただけますか?』と、今度はフォーマルなメールが届きました。この年は授賞式以外に、東京ドームでもイベントがあったので、そちらにも出席しましたね。でも、『いっさいウチからは、お金は出しません』と書いてありました(笑)」

 

――賞金などは、いっさいないんですか?

 

「唯一出たのは、東京ドームでのイベントの前泊ホテル代だけですね。それ以外は、全部持ち出しです。アメリカに行く飛行機代、宿泊費も。エコノミーで行きましたが、滞在費を含めて総額25万~30万円くらい自腹で払いました」

 

――お金の面ではメリットがなくても、世界的なニュースになったことで、何か変化はありましたか?

 

「私は田舎の医者なんで、地元ではそれなりに知られていますが、全国区ではない。大学教授のような肩書があるわけでもない。たとえば、大手製薬会社の地元担当者が僕に講演会を頼もうとしても、『堀内先生って、どこの先生?』と言われて、本社で却下されてしまうんです。

 

 これが、受賞後はガラッと変わりました(笑)。講演会や学会でも、どこそこの教授と司会をすることになったり。『いきなり教授格かあ』なんて思いましたね」

 

――ばっちり箔がついたわけですね。

 

「そうですね。称号をいただいたので、今までお声がかからなかった大手製薬会社やメジャーどころからも、お声がけいただくようになりました。学会で自分の研究について話をできるようになったのは、圧倒的に受賞後です(笑)」

 

――受賞テーマは、自分で直腸にスコープを入れた研究ですよね?

 

「あれは、『いかに内視鏡検査の敷居を下げて、大腸ガンを減らすか』という研究の一環だったんです。研究自体は、2005年には終わっていたものでした。それがイグ・ノーベル賞をもらったことで、私のやり方が『駒ヶ根方式』として、紹介されることになりました。

 

 駒ヶ根方式なら、予約がなくてもすぐに大腸の検査を受けて帰宅できるし、ポリープがあってもすぐ取れる。それが全国に広まったことはとても嬉しいです。受賞したことは、私や病院、駒ヶ根市にとって、本当にいいことづくめだったと思ってます」

 

 次のページでは、おもな日本人のイグ・ノーベル賞受賞者を紹介する。

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