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航空自衛隊が発表しない「F-2A」飛行停止…「翼にヒビが!」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.10.07 06:00 最終更新日:2020.10.07 06:00
「なんでF-2Aが飛んでないのかと、仲間内やツイッターで話題になっていました」
そう話すのは、あるベテランの自衛隊機ファンだ。F-2Aとは、航空自衛隊で運用されている単座型の国産戦闘機だ。米軍のF-16戦闘機をベースに、日米で共同開発され、三菱重工業を中心に製造がおこなわれて、2000年から運用が始まった。ファンの間では、「平成の零戦」と呼ばれている。
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そんな戦闘機に、“ある異変” が見つかったのは、9月8日のことだった。ある空自隊員は、こう明かす。
「16時半過ぎ、松島基地(宮城)で飛行を終えたF-2B(F-2の複座型)の翼から、髪の毛一本ほどのクラック(ひび)を、整備士が見つけた。ただちに百里基地(茨城)、築城基地(福岡)など、各基地で同型機の点検が実施されました。
翌9月9日から、F-2Aが全国で飛行停止となりました。10月1日からは、点検済みの機体が、各基地で飛行を再開していますが……。F-2の機体に使われている複合材は、とても繊細で、簡単には修理できないものです。クラックの原因は、経年劣化によるものなのか……現時点ではわかりません」
10月2日、本誌が百里基地を訪れると、F-2Aが離着陸訓練をおこなっていた。しかし、空自が保有する「F-2」は、A型とB型を合わせて94機。F-2Aは64機前後が運用されており、飛行停止となっていた3週間ほど、日本の防空に穴が空いていたことになる。
2019年度は、中露機などへのスクランブル(緊急発進)回数が947回にのぼり、過去3番めに多かった。国家戦略研究所所長で、元空将の織田邦男氏はこう指摘する。
「通常、戦闘機からクラックが見つかったら、原因がその機体特有の不具合なのかどうかを調べるため、同型のすべての機体を飛行停止させ、点検するんです。
今回、もしF-2Aがそのような “飛べない状態” だったとしたら、スクランブルに備えて、アラート待機している戦闘機がなかったということを意味します。とくに、築城基地でスクランブル態勢に “穴が空いていた” としたら、事態は深刻です。
築城基地には、F-2Aを中心とする2個飛行隊がある。朝鮮半島に近い同基地は、日本海西部上空をカバーしています。2019年、ロシア機が竹島上空を領空侵犯した際に警戒飛行をおこなったのも、築城の飛行隊です。
築城で飛ばせる機体がなければ、新田原基地(宮崎)や小松基地(石川)のF-15J戦闘機が代わりにカバーするのですが、当該基地や要員に負担がかかるため、長く応援を続けることはできないんです」
航空幕僚監部に、クラックが見つかった経緯や飛行停止について確認すると、次のような答えが返ってきた。
「F-2Aを含め、保有する個別の機種の具体的な可動状況を明らかにすることは、対処能力などが明らかになり、結果として我が国の安全を害することとなりかねないことから、すべてのご質問について回答を差し控えさせて頂きます。なお、F-2戦闘機は現在も飛行しております」
F-2を製造した三菱重工は、「顧客情報に関することであり、回答は差し控えさせていただきます」とするのみだ。ジャーナリストの伊藤明弘氏は、「F-2は試作段階からトラブルが頻発していた」とし、こう続けた。
「炭素系複合材で製作した主翼構造部位に、微小なクラックが見つかったり、大きな機動をした際に、垂直尾翼に予測値を超える荷重がかかったりして、開発に遅れが出た経緯があります。それもあって、F-2Aの調達費は、一機あたり約120億円と、各国の戦闘機でも高い部類に入るのです」
ある佐官級空自隊員は、複雑な胸のうちを語る。
「2019年、築城基地のF-2Bが山口県沖で墜落した事故の原因は、操縦ミスとされている。ただ、電子制御されている機体で操縦不能状態が続くことは、ほぼあり得ない。過去には、操縦桿が折れた事故もあったし、『F-2は構造的に問題を抱えているのでは』と、空自内で囁かれ続けている」
空の護りに、一抹の不安がよぎる。
(週刊FLASH 2020年10月20日号)