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年間スクランブル900回!日本の「防空」最前線を見た!

社会・政治 投稿日:2016.09.24 06:00FLASH編集部

年間スクランブル900回!日本の「防空」最前線を見た!

 

 稲田朋美防衛大臣は、8月12日、航空自衛隊小松基地(石川県小松市)を視察し、領空侵犯の恐れがある他国軍機への緊急発進(スクランブル)の現状を確認したうえ、防空に万全を期すよう指示した。

 

 日本に近づく中国機やロシア機へのスクランブルは、2015年度は873回(前年は943回)。対中国機は571回で、対ロシア機は288回だった。いったい国防の現状はどうなっているのか、防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が、航空自衛隊三沢基地を訪ねた。

 

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 米軍機が次々に飛び立つ合間を縫うように青いシャープな機体が離陸する。空自と米軍そして民間機の輻輳(ふくそう)するこの地は、米軍に言わせると「最もビジーな空だ」そうだ。米軍機は音も見た目も粗野な感じがするが、国産戦闘機F−2は小ぶりで轟音も抑制されている。

 

「F−2は洋上迷彩、つまり海に溶け込む色なんです」

 

 まるで親友を紹介してくれるように第3航空団の飛行主任が説明してくれた。F−2は防空のみならず対艦、対地攻撃が可能な戦闘機で、専守防衛の日本で最も可能性の高い対艦攻撃機能に重点がおかれたため、この澄んだブルーの機体となった。

 

 それにしても機体は人がひとり乗るのが精いっぱいの大きさで、メンテナンスは大変そうだ。整備する人たちは本当に細かい作業を、限られた時間内に終わらせなければならない。現場では機体が見えなくなるほど多くの隊員が緊張感のなかで仕事をしていた。

 

 戦闘機などの最新鋭装備となると、維持・整備にかかる経費も労力も大きい。昨今、自衛隊の装備品は新規購入より、こうした作業にかかる経費が上回っている。

 

 そのうえ、周辺国の動きが激しくなればなるほど、燃料も食えば修理も必要になり、ますます将来の装備品の研究開発などに予算を振り向ける余裕はなくなっていく。

 

「国産の戦闘機のよさは?」と尋ねると、迷うことなくこんな答えが返ってきた。

 

「やはり、日本人としての『誇り』ですね。いろいろな国に行くと、メイド・イン・アメリカなどの戦闘機に乗っているケースは多いですが、国産を使っている国はそうはありません。F−2は非常に羨ましがられますし、メイド・イン・ジャパンだと胸を張って言えます」(基地関係者)

 

 国産だと、開発段階で運用側の細かいニーズが反映されるメリットもある。

 そもそも、損耗部品などを素早く調達できることは、空自の運用・整備能力の高さとあわせ、機体の稼働率の高さにつながる。

 

 もし、輸入品であれば、そうはいかない。まず見積もりを出し、そこから交渉→発注→部品製造→輸出の許可→輸送……といった煩雑で時間のかかる一連のプロセスが必要で、それもどれくらい時間がかかるのか不透明だ。

 

 外国では「1年も2年も戻ってこない」という話もあるようだし、製造元が作るのをやめてしまったため、部品を入手できないといった話もよく聞く。

 

 1980年代、航空自衛隊ではF−1戦闘機の後継機を国産開発する計画を進めていた。しかし、当時、貿易摩擦などの懸案事項が日米間に横たわり、米国製の戦闘機導入の圧力が強まっていたため、結局、米国のF−16をベースにした「共同開発」に持ち込まれることになった。

 

 しかし、この共同開発の内容をよく見ると、実際は三菱重工が主契約会社であり、ジェネラル・ダイナミックス社(現在のロッキード・マーチン)、川崎重工、および富士重工が協力会社の形となっている。

 

 それはわが国側が、一体成形複合材主翼や運動能力向上機(CCV)など独自技術を持っていたことが大きい。

 

「F−2は一見するとF−16に似ていますし、F−16がベースだとされていますが、実際はまったく新しく開発された別の戦闘機だといっていいと思います」

 

 F−2に乗っていた空自OBはそう評価していた。性能・能力ともF−1に比べて格段に進歩し、日本のシステムインテグレート技術が大いに発揮されたのである。

 

「(複数の用途での運用が可能な)マルチロールという言葉ではよさを説明できないほど、F−2は何でもこなしてくれます。対地・対艦そして防空といったすべての作戦に従事することができるのです」(基地関係者)

 

 F−2は名機だが、現在、日本の主力戦闘機はF−15になっている。これはアメリカでは「第4世代機」と称されていて、世界の潮流を見ると相対的に旧式化している。中国やロシアでは「第5世代機」の配備が進んでいるからだ。

 

 そうしたなか、日本は「第5世代機」であるF−35を次世代戦闘機として選んだ。

 

 ただし、同機は米国やイギリス、オランダ、カナダ、イタリア、デンマーク、トルコ、オーストラリア、ノルウェーによる共同開発で、そもそも日本は「武器輸出三原則」があるため開発陣に加わっていない。

 

 最近ではこの原則も一部緩和されたが、「後出しジャンケン」の日本がどの程度、兵器としての重要部分に参画できるかはわからない。

 

 現在のように戦闘機が高性能・高価格化してくると、1国だけで製造することは困難で、まして日本の財政事情を考えれば現実的ではない。

 

 とはいえ、共同開発は技術流出というリスクもあるし、理想はやはりオール国産である。かつてF−2を誕生させた経緯からすれば、日本は「純国産」を目指す気概を持ってもいいはずだ。

 

 今、航空ファンの間で密かな期待を集めているのが「先進技術実証機」である。いつ、誰が言い出したのか、「心神(しんしん)」との異名を持つハイテク機だ。空自OBは「F−2の開発が終わりかけた1996年ごろ、次世代を睨んだ国産の戦闘機を開発しなければならないという声が出はじめたのです」と振り返る。

 

 2000年から防衛省技術研究本部などで研究が本格化し、その5年後にフランスの試験施設でステルス性を確認した。超高性能の「日の丸戦闘機」に期待したい。

 

(週刊FLASH 2013年10月15日号)

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